この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

マグロだけが、近大ではない。
「近大マグロ」といえば、全国のスーパーに並び、飲食店で看板メニューになるほどのブランド。知名度は圧倒的だ。その名を冠した近大生だけの「マグロワンダフル教室」が、のびのびと稽古に励むのもうなずける。
だが、近畿大学が養殖に成功したのはマグロだけではない。マダイ、シマアジ、カンパチ、ブリ、クエ、ヒラメ…。さらにはウナギにも挑戦している。「近大マグロ」は一つの顔にすぎない。挑戦し続ける姿勢こそ、近大そのものなのだ。
55[守]には21人の近大生が参加している。10人が「マグロワンダフル教室」。残る11人は他の教室に振り分けられ、社会人と肩を並べて稽古を続けている。その中には、すでに光る活躍を見せる者がいる。
教室最速で用法1をクリアしたのはSHさん(うたしろ律走教室)。010番の回答にはこんな言葉が添えられていた。
前回の指南で教えていただいた「おっかけ千夜千冊 オツ千~」「ほんのれんラジオ」聴きます。
指南を受けてイシスの世界に関心を持ち、出世魚ブリのようにぐんぐん編集力を伸ばしている。
コップで「クラッカーをつくる」と回答したMHさん(ヤキノリ微塵教室)には、同じ教室の学衆からこんな質問が飛んだ。「食べものの方? パーティーの方?」。早くも001番から対話が始まった。ちなみに答えは「パーティーの方」。MHさんは別の回答でこうも語っている。
どうやら私は予定外の出来事にはテンションが上がるタイプの人間みたいです。
卒門までに想定外も山ほど起こるだろう。1キロ1万円のシマアジを釣り上げたときのように、テンション爆上げで対応できる力は頼もしい。もちろん用法1もコンプリート済みだ。
001番のお題は少し緊張してしまいました。
これからはラフに頑張ります!!!
と語るのはTTさん(百禁タイムズ教室)。その緊張、少しはほぐれただろうか? 刺身で最高に美味しいカンパチのように、ナマの自分をそのまま回答に出していってほしい。
週末の集中稽古で一気に4回答。用法1を駆け抜けたのはHSさん(類想ゼスト教室)だ。
体調が回復してきましたので、皆さんに追いつけるように思考を研ぎ澄ませていきます。
このスピードと意志があれば大丈夫。魚の王様マダイのように、編集の王道をまっすぐ、ときに寄り道しながら進んでいこう。そして最後は全員でめでタイ卒門へ。
足踏みしている近大生もいるが、最後にこの言葉でみんなにエールを送りたい。
近大生よ、うなぎのぼれ!
アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)
文/景山和浩(55[守]師範)
週刊キンダイ 連載中!
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。