この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

日刊ゲンダイDIGITALに「本屋はワンダーランドだ!」というコラムがある。先日、イシス編集学校師範の植田フサ子が店主をする青熊書店が紹介された。活気ある商店街の横道にあるワンダーランド・青熊書店を見つけるとはお目が高い。
週刊キンダイも負けてられない!編集がボーボーと湧き出るワンダーランドを紹介しよう。
前回紹介した「リアルサポート」だけではなく55[守]には初めての試みがもう一つある。「マグロワンダフル教室」だ。「学衆全員が近大生」というなんともワンダフルな教室である。
近大といえばマグロ、イナモリといえば魚
近大が32年の歳月をかけて不可能と言われたクロマグロの完全養殖に成功したことは近大生なら誰もが知っているはず。しかし、教室名はこれだけが由来ではない。近大生をぐいぐい引っ張る稲森師範代はなんといっても魚を見るのも食べるのも釣るのも大好き。最近ハマっているのがマグロ釣りというのだからこの人に任せるしかない。”近大の取り組み”と”稲森師範代の数寄”が一種合成されたのがマグロワンダフル教室なのだ。
編集の型はいつでも動いている
全員が学生ということは悩みも近い。就職活動やレポートに追われる学生、TVアニメの「チ。」にハマってる!という話など。そうしたことも編集稽古の中に取り込んで指南として返していく。
就職活動に悩む学生には、
企業ブランドを作ったりするのに、いろいろな発想や気づきが必要になります。企業自身で気がついてない強みの発掘には、注意のカーソルで切り替えましょう。気づきを得るには、視点の切り替えがとても重要なんです。
そして、時には恋愛話もある。
「家族との思い出」《フィルター》を通して、取り出したものは、彼女さんも喜びそうですね。
日常と稽古を分けずに、呼吸をするように型を使い続けて欲しい。稲森師範代の心意気が伝わる指南がシュッと飛んでくる。
飛び出せ!センス・オブ・ワンダー
マグロは速いだけではなく長く泳ぐことでも知られている。15週間の編集稽古ははじまったばかり。クイックなコツをただ知るのではなく、15週間、型をつかい続けることで編集学校を知らない学生とは段違いの編集力が身についていくのだ。
この教室にはセンス・オブ・ワンダーが潜んでいる。センス・オブ・ワンダーとは「神秘や不思議さに目を見はる感性」のことをいう。注意のカーソルを肌身離さず持ち歩き、ありえないフィルターを何枚も持ち出しながら使い込んでいくことで「目を見はる」体験がこの先に待っている。
松岡正剛校長が監修したビブリオシアターという編集的トポスを持つ大学の学生だからこそ、近大INDEXをベースにたくさんの編集力を装備していきながら社会に飛び出していってほしい。
がんばれ!近大生!
アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)
文/一倉広美(55[守]師範)
週刊キンダイ 連載中!
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
乱世には理想に燃える漢が現れる。 55[守]近大番に強い味方が加わった。その名もハンシ。「伴志」と書く。江戸時代の藩を支えた武士のようであり、志高く新時代を切り開いた幕末の志士のようでもある。近大番が、 […]
週刊キンダイ vol.004 ~近大はマグロだけじゃない!~
マグロだけが、近大ではない。 「近大マグロ」といえば、全国のスーパーに並び、飲食店で看板メニューになるほどのブランド。知名度は圧倒的だ。その名を冠した近大生だけの「マグロワンダフル教室」が、のびのびと稽古に励むのもう […]
「来週の会議、リアルですか?」 そんな会話が交わされるようになったのはコロナ以降のこと。かつて会議といえば“会議室に集まる”のが当たり前で、わざわざ「リアル」などと断る必要はなかった。 だが、Zoomなど […]
週刊キンダイ vol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~
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「ミドルシニアのみなさんも遅いことはありません。ぜひチャレンジしてほしい」 この遊刊エディストに、四人の[守]師範たちがイシス編集学校を語るバナーが添えられている。ご覧になっただろうか?その中のひとり奥本 […]
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。