この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

『サピエンス全史』は神話、国家、金銭、銀行、企業、この世の様々な制度など、我々が自明の存在だと思っているものを、存在しない想像の産物であるという観点から論じている。にもかかわらず、これは「歴史」として読める。原題は「Sapiens」だけだが、副題に A Brief History of Humankindとある。ということは、歴史とは共同的想像である、と言っていることは明白だ。
『時の声』は今の新型コロナ状況と似ているところがある。宇宙の変化によって「麻酔性昏睡症候群」が増え、人がほとんどの時間眠るようになっているのだ。研究者たちはあらゆる手を打っているが、遺伝子への刺激も人類の延命の手立てにはならない。宇宙全体が死滅に向かっているからである。そのような生の歴史と死への道筋に直面する私たちが人間の状況に明確に目覚めるにはどうしたらよいのか。
その手立てを伝えているのが『正法眼蔵』である。国家の基盤を信頼したいが、そうしていいのであろうか。先々の自分の生とその基盤である社会や国家は本当に確かなものなのだろうか? そうした不安を克服する唯一の方法は坐禅である、と『正法眼蔵』は言う。これは確かに、やった者にしかわからない。
成長神話のもとで時間に追われるのが当たり前だと思っているあなた。前にのめるその姿勢は、坐禅の中で矯正されるだろう。今ここにいるそのことの価値こそ多くの人が知るべきなのだ、と道元は書いた。この3冊を見比べ実践すれば、時にとらわれているあなたは自由になる。
●3冊の本:
『正法眼蔵』道元/永平寺
『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ/河出書房新社
『時の声』J.G.バラード/東京創元社
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イシス編集学校
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金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。