この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

待ち合わせは4月29日(土)13:30、JR代々木駅西口。在来線を乗り継いで、新幹線で、飛行機で、全国あちこちから子どもイシスメンバーである6人の子どもと9人の大人が集まった。
子どもイシス初の「遠足エディッツ」のテーマは「ゲーム」。
編集的社会見学として、漢字バトルカードゲーム「カンジモンスターズ」を開発したタンキュー株式会社(東京都渋谷区)を訪問した。大人と子どもまぜこぜで遊び、代表の森本佑紀さんにゲーム開発物語を聞く。その後、豪徳寺イシス本楼に移動、ワークとトークで交流を深めた。
ゲームをおもしろくするためルル三条とは?
編集し、さらにその「編集」を世に出すために必要な方法とは?
上原ゴウ君(5歳)いわく、「超楽しかった! ぜんぶ楽しかった!」な一日の写真レポ前編(タンキュー編)をお届けする。
*後編(イシス編)はこちら
■走る! 遊ぶ!
13:45 タンキュー株式会社に到着
子どもたち、エディッツの会やミーティングの肩越しに話してきたけれど、直に顔を合わせるのは初めて。
駅で会って、歩き出したとたん、ゴウ君(5歳)、年中のケント君(4歳)が走り出す。猛烈なビル風にのってスピードアップする二人を小4のカヨちゃんが「あぶないよー」と追いかける。
「早く!」大人より先に、子どもがタンキュー株式会社の扉を開けに、階段を駆け下りていった。
14:00 まずは一戦! デモンストレーション
「カンジモンスターズで遊ぶのはまったく初めて」の二人が、ゲーム開発者のモリソンこと森本佑紀さんに、直接手ほどきを受けながらデモ戦を行う。
ゲームのルル三条(ロールとツールとルール)を体に入れる。
カンジモンスターズは、3枚の「神カード」と20枚の「マナ(真名)カード」を組み合わせてバトルする。
モンスターの力とデザインは、白川漢字学がモチーフになっている。
基本の動きは、「ひく」→「つける」→「はつどう」。神カードに所定の色・数のマナを付けると、効果を「発動」できる。
カードと組み合わせの一例
「色」で付けるので、漢字を知っている、知らないに関わらず遊べる仕組みになっている
例えば、「残(ザン)」は、「戈(カ)」と「歹(ガツ)」をつけると、「あいての山札を6枚へらす」という効果を発動する。
相手のマナをゼロにしたら勝ち。カイヨワの分類でいえば、運・賭けのアレアと、競争のアゴーンを組み合わせたゲームだ。
■大人も 子どもも
14:20 あちこちで勝負
野村英司vs長島順子
石井梨香vs 景山カフウ
カンジモンスターズは「組み合わせ」がキモ。
神カードを慎重に選ぶケイスケ君。
14:40 チャンピオン戦テーブルでの激闘
吉野ケイスケvs景山卓也
大人は笑顔、子どもは真剣。
子どもが本気で遊んでいる時には、笑顔はでないのだということを知る。
デュエルマスターズでカードゲームの腕を磨いていたケイスケ君、奮闘するも、遊戯王で遊んでいたという景山卓也が勝利し、この後3回防衛する。
14:40 黒膜衆に弟子入り
「映ってる!」
激闘の同じ時間、部屋の反対側では、長島ケントと上原ゴウが助っ人・黒膜衆の山内貴暉のカメラに興味津々。
いきなり「教える」-「教わる」の関係になる。
15:10 チャンピオンテーブル・ラストの一戦
景山卓也vs景山カフウ
上原ゴウがマイクで実況する。
15:04 景山カフウ、初代チャンピオンに決定
親子対決を制し、王者の微笑みをみせるカフウ君。
名古屋から「しるこサンド」、奈良からは「大仏」の金太郎あめ、九州からは黒砂糖。
全国各地からご当地おやつを持った。
15:10 モリソンのゲーム開発物語
なぜ、どうやって、漢字バトルゲーム「カンジモンスターズ」は生まれたのか。
根っこは、代表のモリソンの「勉強が大嫌いだった」子ども時代にあった。
モリソンは大学生になって初めて「学ぶことのおもしろさ」に気が付き、いきなり本を読みまくるようになったという。
『白川静 漢字の世界観』(松岡正剛、平凡社新書)の冒頭、「文字は世界を憶えている」が「雷鳴の一撃」となり、カンジモンスターズ誕生のきっかけとなった。
カンジモンスターズのパッケージデザインは「Q」がモチーフになっている
どんなに暗く見えてたとしても、Q(問い)のレンズを通して見れば、世界はおもしろいモノに満ちている。
すべての子どもたちに、Qのレンズをゲームという形で渡したい。
あらゆる学問、たとえば網野史観もゲームに編集できるというモリソンは語った。
15:48 好きなカードを持って記念撮影
「信(シン)」「友(ユウ)」「品(ヒン)」「比(ヒ)」「例(レイ)」「残(ザン)」……めいめい、好きな神カード、マナカードを選び、記念撮影を行った。佐々木千佳局長は「言(ゲン)」。
このあとモリソンも誘って、いざ本楼へ!
◇遠足エディッツ写真レポ・イシス編(後編)につづく
文:松井路代
写真:山内貴暉、子ども支局
information
◆カンジモンスターズは、下記サイトおよびAmazon等のストアで入手可能。
https://www.kanjimonsters.com/
◆子ども編集学校プロジェクトサイト
https://es.isis.ne.jp/news/project/2757
◇(随時更新中)フェイスブックページ
https://www.facebook.com/kodomo.edit
◆お問合せ:kodomo@eel.co.jp
イベントや子どもフィールドに興味がある方は、お問い合わせください。
活動主体:イシス子ども支局
神尾美由紀、長島順子、景山卓也、上原悦子、得原藍、浦澤美穂、吉野陽子、松井路代、石井梨香、野村英司
学林局長 佐々木千佳
イドバタ瓦版組
「イシス子どもフィールド」のメディア部。「イドバタイムズ」でイシスの方法を発信する。内容は「エディッツの会」をはじめとした企画の広報及びレポート。ネーミングの由来は、フィールド内のイドバタ(井戸端)で企画が生まれるのを見た松岡正剛校長が「イドバタイジング」と命名したことによる。
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2025-06-10
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2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。