この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

闇夜の動物たちに出会えるナイトサファリ、温泉宿の誰もいない朝の大浴場、しーんと静まりかえった夏休みの教室。ちょっと時間をずらしてみると、いつもの場所に思わぬ別世界が広がっていたりしますよね。じゃあ、開店前の大型書店に潜入してみたら…?2025年2月9日(日)、東京池袋にあるジュンク堂書店で行われたイベント【選書のプロ・ほんのれん編集部と読みたい本を選んでみようの会】では、まさに時間をずらしただけで心躍る世界が広がっていました。当日の様子をフォトダイジェストでお届けします。
こちらがイベント会場となった「ジュンク堂書店 池袋本店」です。池袋駅の東口から徒歩約5分の好立地で、ビル丸々一棟が抱える蔵書はなんと150万冊。探している本があるならここへ来るとほぼ見つかるという日本屈指の大型書店です。1日の乗降客数が世界第3位にランクインするほど賑やかな人々の往来がある池袋駅ですが、朝は人影もまばら。本もすやすや眠っている時間に、書店のなかへいざ潜入!
1階エントランスを入ってすぐの場所に「ほんのれんフェア」(~3月23日まで)のコーナーを発見。通常は一般販売していないほんのれんオリジナル冊子『旬感ノート』全23種類や、ほんのれん編集部が選りすぐったリベラルアーツ100冊を紹介する冊子『百考本カタログ』が特別販売されていました。タイトルを見て気になった旬感ノート「vol.21 なぜ、わかりあえないのか?それぞれの物語を越えて」を手に取ってみると、テーマに関連した5冊+αの本紹介ページが面白くてたまらず……どれどれ他の旬感ノートも……となりかけたところで、おっといけません。そろそろイベントが始まるのでまたあとで。
朝9時、イベントがスタート!いつもpodcast「ほんのれんラジオ」でゆるくて深いトークを繰り広げ、リスナーの好奇心をくすぐりまくっているほんのれん編集部の女子たちも揃いの法被で登場しました。まだ誰もいない書店なのに、ここだけ人だかりができていて特別感たっぷり。「ほんのれんラジオ」のファンだという方、知人に誘われた方、イシス編集学校で情報を得た方、たまたま書店のPOPでイベントのことを知った方など、さまざまな動機で都内はもとより遠方から駆けつけたという参加者も。
はじめに、ほんのれん編集部のウメコさんがこれからやることのルールを説明してくれました。買い物カゴを持ち、2グループに分かれていくつかのフロアを回りながら本を選んでいくとのこと。「気になった本をとにかくカゴに入れてみる」「買わない本でもカゴに入れてOK」「各フロアで1冊は選ぶ」。ふむふむ、とルールをあたまに入れたところでエレベーターに乗り込み、一気に最上階まで上がります。
エレベーターを降りると、完全貸し切り状態のフロアでさっそく本選びがはじまりました。
フロアの奥のほうまで行く方もいれば、ひとつの棚をじっくり吟味する方もいます。
開店前のお掃除をしている書店スタッフの方にごあいさつをしたり、まだ止まっているエスカレーターを歩いて一瞬クラッとしたり。この時間にしか味わえないさまざまな体験をしながら、フロアを移って本選びを続けていきます。
今回のイベントでは、選書のプロであるほんのれん編集部のメンバーとおしゃべりをしながら書店を回れるというのも大きな魅力のひとつ。日々本を選び、読み、本について書き、語っているからこそ培われた書店の歩き方や、「この一冊とめぐり逢いたかった」という本の選び方など、本にまつわる裏話・こぼれ話をいろいろ聞くことができました。おしゃべりをしているうちに、ぼんやりとしていた自分の好みや関心の輪郭がはっきりしてきたという方や、興味の幅が広がっていつも選ばないような本に手を伸ばしたという声もちらほら。今後また同じようなイベントをしたら、ほんのれん編集部とおしゃべりしたい人の行列ができそうな予感!?
9時45分、9階から順にあちこち歩き回り、ふたたび1階に到着しました。ここまで正味40分ほどで空っぽだった買い物カゴがどう変化したのか、その様子がこちら。
人によって食指が動く本はさまざまですね。カゴへの本の入れ方も、縦に積んでいくか横に並べるかという違いがあって面白い。最後に、こうして自分が集めてきた本たちに関連しそうな「旬感ノート」をひとつ選んでみるというミッションが告げられました。
気になる旬感ノートを手に取るみなさん。またしても読みはじめると止まりません(笑)。それでもどうにかひとつ選び、ミッションコンプリートです。どんな本を集め、どんな旬感ノートを選んだのかを数名の方が発表してくれました。
おなじ場所を巡ってきたのに、まったく異なる本が組み合わせられ、旬感ノートの関連づけ方もまるで違う。「そんな本があるんですね」「へえ面白そう!」と発表に刺激を受けたところでイベント終了時間となりました。しかし、他の方のお話を聴いて好奇心のスイッチがバチッと押されたようで・・・・
イベントが終わってからもすぐに帰らない方が続出!買い物カゴを見せあい、感想を交わしあい、お店が開店してからも楽しそうに会話を続けるみなさん。
「生まれて初めてこんなに人様の買い物カゴを覗いたかも」そんな感想が漏れるほど、ひとつひとつの買い物カゴに、自分にとっては思いもよらない世界が広がっていました。
このイベント、参加してみたかったな~という方に朗報です。3月2日(日)に第2回が開催されます!次回はほんのれん編集部に加えて、書評家としてご活躍の渡辺祐真(スケザネ)さんがゲストでご登場!!スペシャルな機会をぜひお見逃しなく。
「選書のプロほんのれん編集部と読みたい本を選んでみようの会」with ほんのれん編集部+スケザネさん
開催日:2025年3月2日(日)9:00-10:00
開催場所:ジュンク堂書店 池袋本店
〒171-0022 東京都豊島区南池袋2丁目15−5
参加費:500円(税込)(当日、現金にてお支払いください)
お申し込み:Peatixイベントページよりお申し込みください。
買い物カゴ片手に、世にも愉快な世界への旅に出かけてみませんか。
▲左から、おじー、ニレヨーコ、はるにゃ、ウメコ。ほんのれん編集部がみなさんをお待ちしています。
福井千裕
編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。