お湯呑み一杯の編集【ツアーレポ@九州】

2021/04/23(金)09:10
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イシス編集学校には秘伝のお茶がある。その名も「七茶の法則」。『知の編集術』にも『知の編集工学』にも載っておらず、通常は入門者だけが味わえる特製編集茶だ。
「一杯のお茶から九州を読み解く方法」と題した九州エディットツアーでは、そのスペシャルティーが参加者にふるまわれた。どんなお味だったのか、七茶に肖りつつ振り返ってみよう。

 

 

Charm:
「みなさま、ようこそ~」お茶の温泉に漬かって、茶目っ気あふれる挨拶をしたのは田中さつき師範代。大分は耶馬渓在住で、中継会場も提供した。温かいナビに空気も和らいでいく。

 

 

Chance:
「いつものお茶にもチャンスあり」と、編集の茶柱を立てたのは地方支所・九天玄氣組の組長、中野由紀昌である。オープニングムービーには日常の様々な場面にそっと寄り添うお茶が並ぶ。そこに注意のカーソルをあてると、お茶はどんな話を聞かせてくれるのだろうか。

 

Charge:
今回のツアーは九天玄氣組十五周年企画でもある。動画でその歩みを茶ージする。近頃は校長への年賀制作で注目されることが多いが、実際はもっと幅広い活動を行っている。発足会、講演会、講座、茶摘み、書店とのコラボイベント、9周年・10周年企画など。そして、そこにはいつもお茶が傍らにあった。

 

10周年企画「海峡三座」のミーティングにて、抹茶ラテアートに挑戦する松岡校長

 

 

Challenge:
茶匠・上原美奈子が九州のお茶の歴史と、自らの茶レンジ人生を語った。茶道家だった上原が九天と出会ったとき、「荒廃する茶畑を何とか救いたい」という思いが芽生え、お茶農家へと転身をとげてゆく。お茶のためならどこまでも!の情熱に圧倒される。

 

 

Channel:
「身近にあるお茶の木を探してください」という上原の問いに、体当たりで答えたのが守番匠の石井梨香だった。石井は「古い神社にお茶が多い」という情報をもとに、神功皇后伝説が残る場所に周波数を合わせて片っ端から踏破。みごと、お茶の木を次々と発見していった。

 

 

Chain:
お茶を発見したところから、さらにふるさとの歴史を深堀りしていく。石井は香春町の町史に、お茶に関する古い習俗があるのを発見。それを聞いた上原が驚きの声をあげる。上原がかつて訪ねた雲南省トーアン族の風習とそっくりだったのだ。トーアン族には「人はかつてお茶だった」という神話があるという。

 

 宇宙を漫遊する小舟は
 茶の魂を乗せて
 月日と満天の星と化して
 生きとし生けるものを生み出した
 叙事詩『ダグダガゴライビョー』より

 

筑豊の町から、海の彼方へ。お茶の声に耳をすますと、古い古い物語が聞こえてきた。

 

 

 

今回の茶レンジャーの活動にみる「七茶の法則」を中野が解説する。どんなことにも編集の可能性がひそんでいる。そのプロセスごと味わいつくすのが編集の醍醐味である。

 

 


Change:
お茶の見方が変わったところで、参加者のお茶の物語にも耳を傾ける。あらかじめ用意したお茶は何だったのか。ある参加者は「プレミアムティーを準備したら、茶葉よりもティーバッグのほうがプレミアムだった」と答えて会場を沸かせた。アフター茶会でもお茶の質問が次々と飛び出した。

 

Chase:
じつは七茶の法則には、プラスワンがある。それはChase(絶対にあきらめずに追いかける)だ。九天玄氣組の編集はまだこれからだ。

 

そしてツアー後。さらなる茶の物語を求め、ひとり密林へ分け入る茶レンジャー石井の姿があった。

 

 

  • みとま麻里

    編集的先達:藤原定家
    めんたいエディトン、中洲マリリン。二つの福岡ゆかりの教室名。イシスの九州支所・九天玄氣組の突撃女隊長。その陽気さの裏には知と方法と九州への飽くなき探究心をもつ。着付師をしていたという経歴の持ち主。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。