【EDO風狂連】夢の続きは上野で。――続栄華乃夢噺〈かわら版〉

2025/05/25(日)15:00
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令和7年5月17日に開催された【春の候・遊山表象】。あの田中優子宗風と同じ舟に乗り、神田川を周遊しながら江戸の面影をたどるというスペシャルな企ては、荒天により夢まぼろしと相成った。代わりに、EDО風狂連が集ったのは「上野」である。そこで何をしたのか。やけっぱちでカラオケにでも行ったのか。イシス編集学校未入門者にして連中が一人、“徨兎”が当日のうちに書き上げた〈かわら版〉をお届けする。

 

栄華乃噺』

皆が面を揃へし時分には、横殴りの雨にて樹々ざわめきたり。不穏な空模様なりしも、見知れる姿に安堵して、笑みの溢れる者もあり。誰あらうか舟遊びに興じようとの目論見は、口惜しけれど破れたり。やをら声のかかるに、雨風のなかに歩みを進めたり。

 

 

やがて大きな館へと至りしを、その名を東京国立博物館は平成館と言へり。蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児なる特別展が行はれり。館へと招き入れられて後は見上げし高みへと導かれり。回廊を通じて往来を許さるるに、左手はすぐより入られしも右手は奥へと回るもよしとされたり。天の声の聞かれしやう絡繰を授けたるなど、現世との橋渡しもぬかりなく、まさしくべらぼうな歓迎ぶりにて候。

 


さては多くに連なりゆくに、眼前には大門が聳えたり。奥には常夜燈に照らされし櫻の咲けるが垣間見えたり。吸ひ込まれるやうに門をくぐれるに、此処に江戸は吉原にか思はれり。其処彼処に江戸の様相などうかがはれしあれやこれやが所狭しと並べられたり。人たちもまた、層を成して並びたり。所々に大きな人だかり見られり。なるほど美人画のあたりと思はれり。

 

江戸の営みは様々にして映し出されり。色鮮やかにや、ときに墨黒にて粋にや、いづれも生き生きと描かれり。さほどには大きくあらずも、細やかに描き上げられたるは見事なり。おほかたは摺物にて、戯作者や絵師ばかりのものにやあらず、彫師や摺師の手による技巧の集大成にて、版元のネットワークが生みしものなり。姿形あるものに仕立てるに、かかはる者には皆に名がありては、戯作者などが筆名を用ゐたるをもつて皆が名をつらねるに相成らんとされまいか。

  蔦茂り江戸のメディアに風立ちぬ

 

 

いつしか江戸の町に迷ひ入りたるか、蔦屋耕書堂の店前に立てり。ときに重三郎なる者はをらねど、商ひの繁盛はうかがはれたり。日本橋の空に花火が打ち揚がりて宴に興じたる町を照らし出せり。かくて栄華乃夢噺は醒めやらず、今また蔦重的なる者が空を見上げてポンと膝を打つを、雲の流れて出づる月に願はんとす。


文:徨兎(鈴木達也)
写真:大武美和子歌雀、木村久美子月匠

編集:本惚(吉居奈々)


EDО風狂連では〈かわら版〉のみならず芭蕉翁にならって紀行文〈旅の記〉を物するなど、益々メディエーションの風が立っております。徨兎の例のように、イシスの受講歴は関係ありません。狂風ならぬ風狂に遊びたい方、ぜひこの夏よりご一緒いたしましょう。

 

 

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夢の続きは上野で。――続・栄華乃夢噺〈かわら版〉

 

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    【EDO風狂連】は、江戸の文化を「読む」「書く」「遊ぶ」連です。江戸以前の文化を本歌取りした江戸文化をまるごと受け止め、江戸から日本の方法を学ぶ。目指すは「一人前の江戸人」です。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。