マリリン・ホンローの誘惑【本楼エディットツアーレポ】

2023/09/25(月)08:00
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イシス流卒業式「感門之盟」から1週間。寝る間も惜しんで準備に励んだ一大イベントのあとひと息つくのかと思いきや、イシス人は動き続けていた。感門之盟の翌日9月18日(月・祝)には師範古谷奈々が、9月23日(土・祝)には師範阿部幸織がそれぞれ本楼エディットツアーを開催。2人の様子を見てこんな言葉が浮かんだ。「私は疲れたときに休まないの。終わったときに休むの」(マリリン・モンロー)

 

◯マリリンのナビゲート

ふたりのマリリンのもとには東京や千葉、さらには遠く福島から参加者が集った。マリリン古谷のツアー参加者は全員が大の本好き。一方、マリリン阿部のツアーにはイシス編集学校のことを数日前まで知らなかった方もいれば、かつて編集工学研究所が赤坂にあった時代を知る方、第51期[守]基本コースの師範代が直属の上司である方など、イシスにちょっとしたご縁のある方もいた。

 

さまざまなバックグラウンドを持つ参加者たちだが、共通点がひとつあった。それはイシスの本拠地「本楼」を訪れるのが初めてだということ。戸を開け2万冊の本に迎えられた瞬間「うわあ」「すごい~!」と声があがる。マリリンたちはモンロー・ウォークならぬホンロー・ウォークをしながら無類の本棚空間をナビゲートし、参加者たちを本楼の虜にしていった。

 

▲本棚に見惚れる参加者の横で、目を細めるマリリン阿部。

 

◯マリリンのスカート

エディットツアーでは、イシス編集学校ならではの「お題」をいくつか体験しながら「松岡正剛の編集術」の世界を旅してもらう。2時間後、旅を終えた参加者から次のような感想が聞こえてきた。

 

「編集という言葉の捉え方が変わりました」(東京都・40代・Iさん)

 

「方法を知ることで日常生活が変わりそうな予感。編集稽古、面白そうです」(東京都・30代・Yさん)

 

「いままで感覚的にやってきたことが多かった。型を知ると人に伝えるときの説得力が増したり、自分の表現の幅が広がったりしそうですね」(神奈川県・60代・Wさん)

 

ふたりのマリリンたちにとっても嬉しい感想である。だがエディットツアーで体験できるのは、基本コース[守]で学ぶ編集術のごく一部にすぎない。ほんとうはもっと多くの編集術を味わってもらいたいが、2時間ですべてを手渡すことはできないのが残念だ。風で巻き上げられるスカートをおさえていたマリリン・モンローのように、マリリン・ホンローたちも舞い上がる心のスカートをどうにかおさえて、編集術をチラ見せしていた。

 

▲ふだんは奈良県に住み中川政七商店の販売マネージャをしているマリリン古谷。「どんな〆切にも間に合わせる」という類まれな編集力の持ち主でイシスのなかでも指折りのスピードスターである。1年ほど山にこもったり、アメリカ大陸を北から南まで延々と旅していたこともあるそうだ。

 

▲松岡校長の映像を見つめるマリリン古谷と参加者たち。ちなみに九州には、松岡校長から「中洲マリリン」という教室名を授かった悩殺系の師範代・三苫麻里もいる。校長の著書『擬 MODOKI』にちなみ、「松岡正剛をモドいてみよう」というお題に応えるかたちで「セイゴオ+マリリン・モンロー」のコスプレを敢行。破格の編集力を見せつけた。

 

▲マリリン阿部は会社では労働組合のリーダーを務めているとあって“きちんと”した第一印象を抱かれがちだが、実はだいぶおもしろい。いつぞやの感門之盟では突然鈴を鳴らして本楼を沸かせ、語り出したら右に出る者はいないほどの中森明菜好きでもある。

 

◯マリリンのエディット

マリリン・モンローはこんな言葉を残している。

たとえハリウッドの専門家がみな『あなたには才能がない』と言ったとしても、その人たちが全員間違っているかもしれないじゃない。

 

マリリン・ホンローたちも大きく頷くはずだ。そしてこう言うだろう。

「才能」は「編集力」によってひらかれていくのよ。どういうことかって?才能の「才」はね、古くは「ざえ」と読んで石や木などの素材に宿っている力のことを意味したの。それを引き出す職人の腕や技を「能」と言ったのね。石や木とおなじように、ひとりひとりの人間の内側にはその人ならではの「才」が備わっていて、才を引き出すのが他でもない自分自身の「能」、それが「編集力」だと言えるわ。引き出す側の「編集力」と引き出される側の「才」の相互作業のなかであらわれてくるものが「才能」というわけ。

 

ツアーの最後に、マリリン・ホンローは参加者全員にこっそりとキスマークをプレゼントした。ただし、このキスマークに歴史も動かす格別なエディットの方法が潜んでいることは明かされなかった。秘密の扉を開けるのは、[守]開講2カ月目までおあずけだ。

 

 

 

 

 

 

キスの秘密?その続きはこちらで▼

https://es.isis.ne.jp/course/syu

 

  • 福井千裕

    編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。