この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

遅れて繋いだ突破後のzoom汁講、最初に耳に入ったのは山本ユキ師範代の檄だった。
クロニクル番外お題として今期新登場の「全然アートなわたし」へのエントリー者が少ないことが原因のようだ。普段は優しい先生が木のモノサシで黒板をビシッと叩き睨みを効かせる。学衆仲間二人(河野智寿、一倉広美)は提出済なので、私ひとりが教壇の横に背筋を真っすぐにして立っている。目をキョトキョトしながら「ごめんなさい。僕、書きます」と心の中でつぶやいた。そう、私は女性にめっぽう弱いのだ。
女性に弱い性分は母の影響が強い。仕事でいつも疲れている母。イライラをぶつけてくる母。そんな母から逃れる術はひとつだけ。大人しく従うフリ。学級委員、学芸会での主役、選抜駅伝も母に止められたがやり遂げた。しかし「あなたには無理。変わってもらいなさい」と応援されず、心に寂しさが影を落とす。それゆえ、世間で出会う優しい女性、応援してくれる女性にすこぶる弱くなったのだ。
ユキ師範代の目の奥にある「あなたにはできる。がんばれ」という声に背中を押されてできた「全然アートなわたし」。それは私を憧れの本楼に導いてくれた地図でもあった。ユキ師範代は仕立ての女神だったのだ。
振り返ると、高校受験、バイト先、〇〇の学校で私は様々な女神に助けられてきた。お題への回答にも所々に女性がキーになっていた。「全然アートなわたし」によって幼心が再編集されていく。次は花伝所。どんな女神に出会うのか楽しみだ。
記事: 中川治靖(48[破]オリーブ・ビリーブ教室)
編集:師範代 山本ユキ(48[破]オリーブ・ビリーブ教室)
師範 華岡晃生
華岡晃生
編集的先達:張仲景。研修医時代、講座費用を捻出できず、ローンを組んで花伝所入門。師範代、離を経て、[破]師範に。金沢のエディットドクターKとして、西洋医学のみならず漢方にも造詣が深い。趣味は伝建地区巡り。
突破後、なのに50[破]が熱い。感門之盟を1週間後に控えた9月9日、20人のアーティストがオンライン上に集った。クロニクル編集術の番外稽古「全然アートなわたし」の“回答”を持ち寄り、教室を越えて集う企画「アート咲かす展 […]
善光寺へ通ずる長野大通りにはエディティング・セルフが花開いていた。 2月某日、青空が広がり冬のピンと張り詰めた空気の中、49[破]チームあれりすか(おにぎりギリギリ教室・ヤマネコでいく教室)の面々が合同 […]
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IT企業に務める中、閉塞した毎日に一倉はとにかく笑いたかった。「俳句」への出会いは笑うために訪れた落語にて。その場の勢いで句会に入会したのが2014年。以降、俳句にのめり込んでいる。 「俳句は続けたほう […]
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。