食いしん坊師範代のグルメ編集●52[守]勧学会模様

2023/11/24(金)12:00
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それはなんの前触れもなく突如始まった。
「指南にも、自己紹介にも、師範の言葉にも行かず、お前はなぜここにきたんだというお言葉を真摯に受け止めながら、アレをお届けに参りました」

という勧学会での師範代 内村放の勿体ぶるような書き出し。

<教えて!カミグルメ>

食いしん坊(失礼)、カミ・カゲ・イノリ教室 師範代 内村放が勧学会に立ち上げた企画である。ことの発端は学衆Hさんの自己紹介にあった。

「以前は食べたことのない物に対して少し保守的だったが、今は食べたことないものを食べてみたい。日本全国津々浦々、美味しいものがあったら教えてください」

この呼びかけを編集契機とし、即座に応えたい食い意地のはった(また失礼)内村師範代。その行動力に呼応するように、待ってましたと教室のみんなからドシドシと美味しいものリストが届く。いつの間にか教室名を冠とした”カゲメニュー”としてみんなの中に定着していった。
みんなの料理をコースに仕立てる内村師範代のグルメ編集をご賞味ください。

 




│   ようこそ、異至簾・神食庵へ   │
今宵みなさまに振る舞いますは門外不出・唯一無二一晩かぎりのカゲメニュー
賑やかにしつらえました。ちゃぶ台を囲んで心ゆくまでご賞味あれ
      
ー先付ー
ピントック
┃S.Hシェフ┃
先付として済州島の郷土料理「ピントック」をふるまってくれたのは、S.Hさんだ。
ピントックとは、「蕎麦粉のクレープ生地に、ごま油と塩で炒めた千切りの大根を包むだけの、質素な料理」とのこと。済州島旅行の思い出をくるんで投稿してくれた。

ーお凌ぎー
宮崎辛麺
┃内村シェフ┃
長崎出身である内村師範代のお凌ぎセレクトは九州繋がり「宮崎辛麺」。
激辛スープ、もちもちのこんにゃく麺、フワフワ卵に、にんにくが悪魔的に絡み合う。宮崎県のソウルフードが食欲をそそる。

ーお椀ー
寒ダラ汁(たらじる)
┃M.Iシェフ┃
出身地である山形の郷土料理からM.Iシェフが選んだのは「寒ダラ汁」
アラから出る濃厚な出汁と味噌、ぷるぷるの白子。
香り豊かな岩のりに汁をたっぷり吸わせて、あつあつをフーフーしながら食べたい。

ー向付ー
かぶらずし
┃R.Mシェフ┃
向付はR.Mシェフの地元である富山・石川の郷土料理からのチョイスした「かぶらずし」。
人参、糀、ブリの色味が目を惹く。カブの歯ごたえ、糀の甘みが絶品。故郷の思い出を重ねるセレクトが続く。

ー焼き物ー
「あすか」のつぼ焼き
┃K.Aシェフ┃
「つぼ焼き」と言えばステレオタイプではサザエを想像しがちだが、K.Aシェフが振る舞う「つぼ焼き」は違う。
一見するとキノコのような見た目、ふんわりと甘いパイ生地に包まれたチキンやカレーを家族との思い出と一緒を紹介してくれた。

ー炊き合わせー 
ミールス
┃小野シェフ┃   
バスマティライスを中心に、パパド、ポリヤル、ダール、サンバル、ラッサム、カード、アチャール、チャドニが、一枚のプレートやバナナの葉の上に視覚芸術的に並ぶ、南インドの定食的位置づけである「ミールス」。
口内にひろがるスパイスのハーモニーをご堪能ください。

ーごはんー
梁山泊の肉あんかけチャーハン  
┃S.Aシェフ┃
S.Aシェフが吉祥寺時代の思い出と共に届けてくれたのは梁山泊の「肉あんかけチャーハン」。青梅街道沿いにある人気の中華屋だ。
パラパラチャーハンのうえに、とろみが効いた肉あんがたーっぷりでボリューム満点。

ー甘味ー
プリッツ<香りロースト>
┃A.Uシェフ┃
「なくなってしまったんです!」と残念そうに報告してくれたA.Uシェフが選んだのは「プリッツ<香りロースト>」。
2019 年に大幅リニューアルによって廃盤になった模様。現在売っているのは、「プリッツ<ロースト 塩バター〉」味で、「塩バターでないのがよかったのに。。」と落胆と共にこだわりを語る。

ーおみやー
ニュータッチの凄麺シリーズ
┃K.Oシェフ┃
数あるカップラーメンの中で、最も美味しいシリーズ(K.O調べ)。
ご当地ラーメン含め、約30種が発売されているが、そのどれを食べても満足できるクオリティ。「これが200円台で食べられるヤマダイ社の技術力に大感謝」と、企業案件とも疑われかねない熱と共にコメントを寄せてくれた。




今日もカミ・カゲ・イノリ教室の稽古は止まらない。その勢いを焚き付けたのは間違いなく内村師範代の圧倒的なスピードであろう。
深夜に届く指南の裏側には、夜食をガソリンに貪り食らう、高燃費体質な師範代の空腹編集が止まらないのではと勘繰ってしまうのであった(何度も失礼)。

 

  • 小野泰秀

    編集的先達:ゲーリー・スナイダー。ファッション、工芸、音楽、映画、写真、マンガと幅広い慧眼をもつジュエリーデザイナーにして骨董商。所持金80ドルでオーストラリアに上陸し、生活を始めた行動力の持ち主。ブレない自分軸を立てつつ、ただいま編集力探究に邁進中。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。