一山越えて、次の頂へ【50[守]空文字アワー】

2022/11/23(水)07:10
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 ある簡単な文に一か所「空白(  )」が用意されている。ここに自由に「言葉」を入れ、新しい空白(   )を一つ加える。次の人も同じことを繰り返す。徐々に文章が長くなり、物語となっていく。守稽古の用法1が終わりにさしかかる頃にスタートする勧学会イベント「空文字アワー」だ。

 言葉を入れ、新たな空白を加えるシンプルなゲームだが、入れる言葉によって、文意が広がったり、物語の地が大きく入れ替わる。いかに仲間を驚かせようか、どの学衆もいつの間にかしゃかりきになる。と同時に、物語が変わりゆくたびに、歓声があがる。


 兄弟教室である厳選タングル教室とダルマ・バムズ教室でも、例にもれず、たくさんの声に湧いた。

◆厳選タングル教室◆
・プテラノドン!!!とびっくり。
・新たな登場人物(猫)が!! ふたりが今後どのように絡んでいくの
 か、目が離せませんね!
・ダダ・シュルレアリスム詩のように連綿と無意識の言葉つなぎが
 続きますように
・時空が歪んでいて輪廻転生もしている感じ、好きです。

◆ダルマ・バムズ教室◆
・お題への回答も一部まだですが、こちらから先に失礼します…^^;
・そろそろ誰かなぜ親父の怒鳴り声が響くとご当地カレーになるの
 かオチをつけてくださいませんか?
 と、言いつつ話を広げます。
・いつの間にやらカレー色に染まっているのに驚きました笑

 

 8日後にゲームオーバーとなった。が、山頂の景色を味わう間もなく、両教室では師範代が次の編集をけしかけた。出来上がった世界でたった一つの物語に、皆でタイトルをつけようというのだ。
 ダルマ・バムズ教室では学衆の一人が、仲間の言葉にちなんだタイトル案を提案する傍ら「なんとなく消化不良なのでこっそり書き足します」と完結したはずの物語を更に拡張した。厳選タングル教室では、出された3つのタイトル案に「もうひとひねり」の編集をかけて、新タイトルを生み出した。

 「変化を意識することの難しさを感じつつ、自分の限界が皆さんのおかげで超えられる体験でした」と振り返りの声も届いた。イシス編集学校校長、松岡正剛は「編集には”とことん”も必要で、編集稽古はあきらめてはいけません」と「chase(絶対にあきらめずに追いかける)編集」を促す。開講してからひと月あまりで、編集稽古へのカマエは十分。50[守]は、第1回番選ボードレールに突入した。仲間と共にどこまでも山を登り続けたい。

 

  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。