この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

■教室は編集的物語の原郷
10月24日に開講日した50[守]。学衆はそれぞれの教室で編集的世界に足を踏み入れた。
師範代は学衆の回答に向き合い、そのなかに潜む編集可能性を見出す。覚束なかった学衆の足取りは、指南によって次第に歩幅を広げ、注意のカーソルの動きは加速する。
学衆にとって教室は編集的物語の足場であり原郷だ。教室を「稽古を進める道場」と見立てるなら、勧学会はさしずめ「部室」だろう。学衆は稽古で揺らしたアタマとカラダを「部室」に運び、普段着に着替えながら、交わす対話に変化が生まれていることに気づく。
型を得た自分から新しいコトバが生まれる。それは「旅立ち」であり、新しい何かに向かう「差し掛かり」でもある。
■教室に立ち上がるワールドモデル
開講に先立ち、10月1日(土)の伝習座で、世界にひとつしかない教室の編集に臨む師範代へ、ひとつのお題が与えられた。
伝習座で、[守]のやわらかいシステムについて語った師範の尾島可奈子と森本康裕
Q.あなたの教室のワールドモデルは?
仁禮洋子師範代(悠阿弥アメリ教室)
教室 茶室
勧学会 縁側
大塚剛史師範代(ここいら普門教室)
教室 マラソンのレース場
勧学会 給水場
黒田領太師範代(ミネルバ・ロードス教室)
教室 アカデメイア(アテナ)
勧学会 街の広場
遠藤健史師範代(止観エンドース教室)
教室 サッカー教室
勧学会 帰宅前のベンチ
恩田偉志師範代(歓察めげない教室)
教室 ルフィ メインストーリー
勧学会 麦わらの一味 スピンオフ作品
ワールドモデルを描くことで世界が生まれる。教室という編集的物語の起源は、師範代ひとりひとりによる世界定めにあった。
■編集が起きているのは教室だけではない
[守]のシステムのなかで、稽古を進める場は教室だけ。けれど編集的方法との出会いは教室の外でも起きている。(森本康裕師範)
イシス編集学校では、稽古を進める教室以外に、いくつもの交流の場が設けられている。教室を越えた交流ができる【別院】がそのひとつだ。
Q.あなたの教室にとって【別院】とは?
仁禮洋子師範代(悠阿弥アメリ教室)
別院 大茶会
大塚剛史師範代(ここいら普門教室)
別院 隣のランナー
黒田領太師範代(ミネルバ・ロードス教室)
別院 ポリス
遠藤健史師範代(止観エンドース教室)
別院 練習試合
恩田偉志師範代(歓察めげない教室)
別院 四皇・王下七武海・海軍との戦い(鎬を削る戦い)
お題を受けた師範代は、それぞれの教室のワールドモデルをベースに、学衆にとっての【別院】を読みかえていく。
ベースとなる物語が違えば、旅立った先の物語も異なる。師範代が描くプロフィールは多様だ。開講前から【別院】の物語はスタートを切っていた。
開講から1ヶ月。用意されたワールドモデルに学衆が訪れ、これまで稽古を重ねてきた。師範代と学衆の交し合いが多彩なシーンを生み、ワールドモデルを拡張させた。
それぞれの教室を足場に、物語は新たな段階へ進んでいく。
■50[守]別院オープン
50[守]開講から27日目の11月19日(土)、「設え」を整えた【別院】がオープンした。
学衆は教室の物語世界を引きつれて【別院】に現れる。そこで生まれるストーリーはどんなものだろうか。
物語と物語のインタースコア。50[守]の新たなワールドモデルの創造はこれから始まる。
阿部幸織
編集的先達:細馬宏通。会社ではちゃんとしすぎと評される労働組合のリーダー。ネットワークを活かし組織のためのエディットツアー も師範として初開催。一方、小学校のころから漫画執筆に没頭し、今でもコマのカケアミを眺めたり、感門のメッセージでは鈴を鳴らしてみたり、不思議な一面もある。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。