「必死の時間」はここにある! 49[破]アリスとテレス賞物語編集術エントリー

2023/01/16(月)18:55
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アリスとテレス賞物語

 田中優子先生による50[守]特別講義(参加者130人超)が盛り上がる裏で、49[破]の学衆・師範代はアリスとテレス賞物語編集術エントリーに向けて、疾走中であった。

 

 物語編集術は、英雄伝説の型をつかって3000字の物語を書く、それをアリスとテレス賞(AT賞)で競う。いまだこの世になかった新しい物語を生み出すお題は、[破]の華なのだ。

 

 特別講義で優子先生は語った。編集学校には、生徒が締切までの間に脳の底がカラになるくらい言葉を絞り出す「必死の時間」があると。それは大学ではなし得ないことだとも。まさにまさに1月15日のエントリー〆切18:00に向けて、学衆は言葉を絞り出し、師範代はその物語に多様な型を当てて指南しつづけた。

 

 10教室・学衆67名中、エントリーしたのは46名だった。選評会議は1週間後の1月22日。月匠、番匠、評匠、師範、学匠そろっての侃侃諤諤が繰り広げられる。結果発表は、2月上旬。全エントリー作品に講評がつく。5つの課題映画のうち、人気イチバンは「男はつらいよ」13点、以下「スター・ウォーズ」「ミッションインポッシブル」「クレヨンしんちゃん」が10点ずつ、「エイリアン」が3点だった。エイリアンを選ぶ学衆は毎期少な目だが、ほかは拮抗していてバラエティがたのしみだ。

 

 いわゆる人気シリーズ映画の型を読みとり、それをもとに別様なワールドモデルに着替えて新たな物語をつくる。この1か月、何度も再回答した学衆は、物語の型、それが持つ意味とパワーを身に沁み込ませたことだろう。世にある物語は、小説や映画などエンタメばかりではない。嘆かわしいことではあるが詐欺師のつくった物語にからめとられることもあれば、自ら苦しい物語に縛られてしまうこともある。物語編集術を手にした学衆は、方法としての物語というメタな視点を手に入れた。世に溢れる物語をより楽しみ、うまく付き合ってゆけるだろう。

  • 原田淳子

    編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。