この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「帰りの電車でやってしまいました」
こんなマクラとともに学衆のうるちゃんから回答が届けられると、トミーこと國富敬二師範代は「帰りの電車で! 型破りの即実践ですね!」と応じた。
このやりとりが事件だったのは他でもない。この日1月16日は、豪徳寺の本楼で2年振りとなるリアル汁講が開かれたのだ。兄弟教室(オリーブなじむ教室)との合同開催である。今さら今こそ教室は遠方の学衆が多く、4人がオンラインでの参加。うるちゃんは教室唯一の本楼参加組であり、トミー師範代を引っ張る姿は凜々しかった。
そのうるちゃんが本楼からの帰路、「手を止めてる場合じゃない!」と回答を放ったのである。これは間違いなく事件だ。
なぜ火が付いたのか。
汁講で行われたワークは、3冊の本をインタースコアして、教室のキャッチフレーズを決める、というもの。事前に「教室のらしさを示す本を選ぼう」と打ち合わせしていたにも関わらず、挙がってきた本は、教室の雰囲気とは似ても似つかぬものだった。
(1)柴崎友香『よう知らんけど日記』(うるちゃんセレクト)
(2)猪野健治『やくざと日本人』(國富師範代セレクト)
(3)平山亜佐子『不良少女伝 莫連女と少女ギャング団』(角山師範セレクト)
すかさず、学衆かわちゃんが「なにか教室模様の真逆ですね(笑)。もっとアウトローで外れてもいいってことかな」と本質を突いた。そもそも不良少女とは? やくざとは? 皆でアーキタイプを探っていく。
アウトローとは「型破り」を指すのではないか。自分たちは大人しすぎたんじゃないか。そうだ、自分の中のヤクザを出していこう。バリバリいくぜ。アタイらは卒門までかっ飛ばすんだ! 今さらセブンズの交わし合いは、さながらレディースの決起集会だった。
この日の紅一点ならぬ墨一点、学衆ピグさんは、自分たちが目指すモードとして「バッドセブンズ」と切り取った。
キャッチフレーズがまとまりかけたその時、関西在住の学衆きっしゃんから、題名をもじって「よう知らんけど」とツッコミが入った。そう、BPTは一本道ではない。肩肘張らずにフッと鼻から息抜いて、行きつ戻りつしようやないか。
誕生したキャッチフレーズがこれだ。
バリバリバリバリ
自分の殻をやぶれ
バッドセブンズ
卒門への道
ようしらんけど
「バリバリと殻を破って、バリバリとお題に取り組んで行きたい」(学衆さきちゃん)
「卒門に向けてヤル気が起こりました」(学衆きっしゃん)
「改めてお尻に火が付いた」(学衆ピグさん)
汁講後に教室や勧学会に溢れた言葉だ。そうなのだ、リアル汁講は参加者全員に火を付けたのである。
トミー親分率いるバッドセブンズは、卒門までバリバリ行くぜ! 連想全開でどこまでもカブいてやるぜ!
作成/チーム<い・キ・き>(親分・國富敬二 × ガキ大将・角山祥道)
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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2025-06-10
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建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。