この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

設計士に操縦士、インフルエンサーにナイチンゲール。いずれも47[守]縞々BPT教室メンバーの属性である。と言っても職業ではない。あだ名でもない。称号だ。
2021年7月末日、縞々BPT教室1回目のオンライン汁講が開かれた。開講から3カ月、互いに顔をあわせるのは初めてである。2日前に田中香師範代から宿題が出された。「他のメンバー回答(特にミメロギア)を読んでおいてください。」「他のメンバーの「らしさ」を考えておいてください。」とのざっくりした指示だった。
汁講当日、自己紹介の指名をしながら田中が告げる。「MさんにはRさんの、RさんにはFさんの他己紹介もしていただきますので、よろしくお願いしますね」。参加した学衆7名の顔には一瞬戸惑いの色が浮かぶ。他己紹介とは、互いに称号を贈るワークだった。
<うねうね他己紹介フォーマット>○○さんは、まさに(まるで)●●です。わたしが好きな○○さんのミメロギア回答が■■だからです。そんな○○さんに、「縞々BPT教室の▲▲」の称号をさしあげます。
3分きっかりのシンキングタイムを延長することなく発表された称号とその理由は以下のとおり。戸惑いの色は蜃気楼だったようである。
Rさんは教室の「インフルエンサー」です。
「打ち上げ花火の砂浜・プラネタリウムの湖畔」がYouTube動画のように鮮やかだから。
Fさんは教室の「藤原屋(ふじわらや~)」です。
「歌舞伎の大谷・能のイチロー」が歌舞伎役者に間違われたこともあるFさんにぴったりだから。
Dさんは教室の「ナイチンゲール」です。
「見える声・聞こえる文字」が現われていないことや言えないことも引き出してくれる看護師のようだから。
Kさんは教室の「異空間への操縦士」です。
「充電の旅雷・時空の旅幽霊」で宇宙の果てや不思議な世界に連れて行ってくれるから。
Sさんは教室の「チャレンジャー海淵」です。
「みる声・ふれる文字」に底知れぬ深海のような奥深さを感じるから。
Oさんは教室の「ケンタウロス」です。
「ラムネの砂浜・紅茶の湖畔」でカタカナと漢字を見事に融合させたから。
Mさんは教室の「ダイアグラムの設計士」です。
「被災者の声・応援の文字」には、ぐるぐるまわる山手線のように、「助けて」と「がんばれ」のやりとりが続くイメージがあるから。
イシス編集学校では、インターネット上の教室でお題・回答・指南の言葉が行き交う。開講時は名前しか知らない学衆どうしだが、回答・指南を読みあうことで、互いを理解し合い、連帯感も生じる。
縞々BPT教室のメンバーはリズムを崩すことなく回答を重ねてきた。Oさんはお題が目指していることや稽古で気づいたことを勧学会に記録することを週1回のルーティンにしている。師範代が提案した「縞々あっぱれ回答集まれ!」には互いの回答のどこがどうあっぱれなのかを言語化した投稿が続々届く。編集稽古の眼目である「振り返り・リバースエンジニアリング」をあちこちで興している。
着実な編集稽古は、「らしさ」をとらえ、それに適した回答を短時間で選び、言葉で表現する目利き力を培うのだ。
47[守]は8月22日の卒門に向け、稽古に磨きをかけるステージに入った。
次期48[守]コースの募集締め切りは10月11日(月)
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った9月の彼岸をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した雑誌の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグル […]
8年近く続いた黒潮大蛇行終息の兆しが報じられる中、イシス界隈に、これまでにない潮流がおこっている。 松岡正剛の「千夜千冊」をキーブックとし、「九州の千夜千冊」を冠した雑誌づくりが動き出したのだ。 イシス編集学校の九州支所 […]
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インターネット上の稽古場に50[守]学衆の声が届かなくなって10日が過ぎた。次期に受け渡すものを交し合っていた師範のラウンジももうすぐ幕を下ろす。卒門式の師範代メッセージには、メモリアルな期を走り切った充実がみなぎって […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。