この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「ちょっといい…?」校長が自著『稲垣足穂さん』を手に、オンライン伝習座の画面に飛び入りした。
44[破]伝習座のプログラム「セイゴオ知文術 10冊を共読する」の最中のことだ。
[破]において最初の関門となるお題「セイゴオ知文術」は、ミニ千夜千冊を書く。課題本は多様な読みを誘う10冊。伝習座では、師範・評匠・番匠・学匠が入れかわり立ちかわり、自分が発見した宝物のように課題本の魅力を語る。とても1冊4分では収まらない、はみ出し気味のトークが伝習座の名物である。
関富夫評匠は、松岡校長の著作『稲垣足穂さん』を担当し、自宅からレクチャーを展開した。長新太やジュール・ヴェルヌなど、関連本もどんどん画面に取り入れる。校長から「もっとあるの?見せて?」の合いの手が入る。関評匠の「70年代という時代背景が地にある」という指摘が、校長の何かを起動させたようだ。
「いやあ関くんのよかったね」と、学林堂のマイクの前に坐る校長。『稲垣足穂さん』の解説を書いた「ばるぼら」とは誰か? なぜリットーミュージックの立東舎なのか? など評匠にも謎だったことを明かしてゆく。横から差し出された『タルホ事典』をひらき、淡い菫色の紙に印刷された「タルホ・セイゴオ・マニュアル」をズームアップして示す。
校長にとって70年代とは、『遊』を中心に文章を書くことにいちばん集中して向かった時なのだそうだ。稲垣足穂のように捉えがたい、でも捉えたくてならない存在に、かきたてられたからなのだろうか。
小さな本に秘められた謎が、明かされたようでまた増える。[破]の稽古には、もどかしく、きわどい読書体験も仕込まれている。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。