1日限りの教室仕立て――今こそ破! 旬然ツアーレポ (1)

2022/02/17(木)13:13
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 「手紙と音楽」。
 大きな声で告げながら、師範代の北條玲子はラブレターのイラストを掲げ、オタマトーンをかき鳴らした。
 菜の花ドラドラ教室、最初の稽古は「実物ミメロギア」。

 画面越しに学衆の様子を伺うと、皆すっと回答に集中している。ブランクを感じさせない即応の姿勢がタマラナイ。


 ミメロギアは、即答がキモ。タイマーをセットして様子を伺うが、「久しぶりで言葉が出ない!」と言いながらもシンキングタイム1分で潔く回答を放つ学習達。
 学衆Nさん:躍る手紙・踊る音楽
 心躍るお知らせと、思わず体が動く音楽の魅力、心体を貫く躍動感を同音異字を使って引き出した。
 他の学衆からは、番ボーで入選しなかった悔しさがポロリと口から溢れる一コマも。
 スタッカートなミメロギアを終えると、矢継ぎ早に、破のお題「発想飛び道具」を回答し、教室での編集稽古は終わりを告げた。息もつかせぬ応酬がイシスっぽい。
 今回の稽古は即見指南。ラリーで回答を磨けなかったのが、北條には心残りであった。ミメロギアは磨いてこそ。番ボー楽しかったでしょう?

▲オタマトーンを手にする北條師範代。どんな音を出すかはアナタ次第?


 これは、「今こそ破!イシス旬然ツアー」のワンシーン。
 35期から46期までのそれぞれの思い残しを携えた学衆が集まった。卒門したけれど、すぐには破には進まなかった少しだけお久しぶりな皆さんを、編集稽古でもてなそうと、この日限りの4つの教室が立ち上がった。
 遠隔ハッカク教室(神尾美由紀師範)、おかえり位相教室(畑勝之師範代)、春眠ケッコー教室(阿部幸織師範代)、菜の花ドラドラ教室、これは私、北條の教室。旬然の旬と学衆を受け止める気持ちが、それぞれの教室名にあらわれている。
 稽古の後は、破の稽古に新井陽大師範の「守破連結語り」(こちらの記事をどうぞ)。物語編集の前に聞きたかった。おそらく大賞をとれたことだろう。

 そして再び教室に戻ってミニミニ汁講。
「守は楽しかった。でも破は不安」「時間がどれくらいかかるのか」
 未知へのダイブには、不安がつきまとうもの。センパイ枠の突破した学衆(ゲスト)からの時間編集の方法に、神妙にうなずく参加者の皆さん。
 でも、心配はいらない。
 破で求められる回答は、確かに守のアウトプットよりもボリュームが多いが、一段一段ステップを踏んでいけば、大きな物語ができるように仕組まれている。そして何より教室には、師範代と仲間がいる。安心して師範代とのラリーを重ね、創文を、プランを生み出してほしい。
 学衆Oさんは、破のお題「発想飛び道具」の回答でこう答えている。

 

 2022年を食べ物で表すなら〔スパイスのきいたカレー〕
 2022年は〔積み重ねな一年にしたい〕

 

 指南のピリリとした刺激で充実した稽古を積み重ねてください。

 そうそう、スパイスは火を通しすぎると香りが飛ぶ。破への気持ちも煮詰めずに。
 時間はいくらあっても足りないほどに、稽古への思いを思い出す2時間であった。守の稽古が、破でどう実を結ぶのか、破の稽古の中で何が自分の身に起きるのか。師範や師範代から直接聞くことのできる機会はそうはない。
 あとはもう、考えこまず、えいやと飛び込んでほしい。少し不思議な名前の教室があなたを待っている。

 今こその破へ。

 

 

▲ツアー師範代が「守・破」をミメロギア。◆ヒラメキの守・仮留めの破/守破のおけいこは、連想力・推敲力の組み合わせだ!(畑師範代) ◆毛穴開く守・触覚伸びる破/守で存分に「私」開いたら、破で存分に「私」を伸ばして「世界」とインタースコアを!(阿部師範代)◆丸飲みの守・かぶりつきの破/ゴクリと飲み込んだ守の型を使って、破のお題を咀嚼しよう!(北條師範代)

 

◎この記事を書いた新人記者◆北條玲子(ほうじょう・れいこ)

アルゼンチンタンゴで名を馳せ、73感門之盟では実際に本楼・本棚劇場にあがった。期待の学衆はそのままイシスロードを駆け抜け、47守ピアソラよろしく教室師範代へ。師範代&ライターとして、タンゴさながらの情熱をこの旬然ツアーに持ち込んだ。

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。