人気No.1はあの本だった! 43[破]知文AT

2019/11/15(金)13:36
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 3人4脚のマラソンが終わった。読み・書きの両輪を磨きあげる[破]コースでは、松岡正剛の千夜千冊にまねぶ「セイゴオ知文術」が前半の山場だ。知文アリスとテレス賞(通称AT賞)という全校アワードとして、受講生全員が火花を散らすお題である。

 

 学衆は課題本10冊のなかから1冊選び、それについて書く。書評でもなく感想文でもなく、著者と自分とのあいだに立ち上がった世界を「知文」として仕立てる。著者の主張だけ、自分の感想だけの独走ではなく、両者が手を携えることが要だ。

 

 編集学校で初めて学ぶ読み方と書き方に、学衆は呻き、嘆き、頭をかきむしる。折れそうなほどの力でペンを握りしめ文机に向かう彼らに、お茶やお菓子、ときに警策をもって朝な夕な寄り添うのは師範代。すべての課題本を読み込み、それぞれの学衆の原稿を受け取っては、平均3~4回、多いときには10往復以上のやりとりをし、産婆さながらに学衆の言葉を引き出してゆく。

 

 

 文化の日から始まる1週間は、締切直前の知文ウィーク。全学衆が本を読み、知文を書き、指南を読む。各教室には、ぐちゃぐちゃに丸めて捨てられた下書きの山と、そこから砂金のように選り抜かれた知の結晶があふれた。

 

 11月10日(日)18時。締切の鐘が鳴るやいなや、歴代の指導陣が集う師範詰所に師範代9名が駆け込み、その場に倒れ込んだ。彼らの胸にしっかり抱きかかえられていたのは、学衆の作品タイトルだった。

 

 今期のエントリーは、73名中61名。師範代が教室から持ち出した原稿は印刷され、イシスきっての目利きである評匠・師範の手元に渡った。学衆が読んで書いた作品を、つぎは選評委員が読み込み、そこへ講評を書きつけてゆく。アリスとテレス賞講評の発表は11月末予定。

 

 

 

 今期43[破]の人気本トップ3は、1位『ひきだしにテラリウム』(九井諒子、イースト・プレス)、2位『神話の力』(ジョーゼフ・キャンベル他、早川書房)、3位『人間はどこまで動物か』(日高敏隆、新潮文庫)。


 『ひきだしに~』は、モードが目まぐるしく変わる漫画版ショートショート。一貫するテーマもストーリーもないコミックを一本のテキストにまとめあげるには、メディアを横断するタフな編集力が要求される。前期42[破]の人気No.1は『神話の力』。

  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。