セイゴオ秘蔵音源、ついに蔵出しか

2019/12/16(月)10:09 img
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 編集工学研究所には、文字化されていない松岡正剛校長の講演音源が大量に眠っている。書き起こし隊は、SNS伝奏連のブレストから生まれた。それをプロジェクトにまで発展させたのは福田恵美師範代だ。汁講、10[離]の同窓会、[遊]風韻講座の連句の座、あらゆる機会をとらえては声をかけ、有志を募った。


 プロジェクト名はその名も蔵出し隊。校長の語りを文字にする。声に耳を澄ませ、指先でキーボードをたたく。何度も何度も音源を巻き戻す。そして、隊員同士の相互チェックを経て仕上げていく。

 

 どうしても音と言葉が結びつかなかったところを他の隊員があっさり埋める。自分の世界の捉え方の死角に気がつくこともしばしばだ。


 隊員がもっとも迷ったのは編集の加減。書き起こしただけでは伝わらない。声から文字になって失われるもの、文字になって付け加えられてしまうもの。松岡校長の話にどこまで隊員の編集が関与していいものか。編集の及ぼしている力の大きさを実感する。


 こうして磨かれたお宝群は、「遊刊エディスト」でついに蔵出しとなる予定だ。

  • 林 愛

    編集的先達:山田詠美。日本語教師として香港に滞在経験もあるエディストライター。いまは主婦として、1歳の娘を編集工学的に観察することが日課になっている。千離衆、未知奥連所属。

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コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。