着物のまにまに〜時空センスの編集術 #4 モジュールの寿ぎ

2021/09/12(日)09:01
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 みなさん、お久しぶりです。
 すっかりご無沙汰していましたが、またゆるゆると、着物と編集を混ぜた「わたしのまにまに」をお話ししていきますね。
 
 さて、着物はモジュールを組み合わせてスタイルを作っていきますので、「組合せ」る時点で、即「編集」なのですが、実は個々のモジュールに対して事前にあることをしておかないと編集できないのです。
 
 それは「寿」(ことほぎ)
 
 モジュールである着物や帯や帯締めや帯揚げを、獺祭のようにカウンターに並べて祝福するだけでなく、「事解ぐ」のです。つまりコンパイルです。モジュールの持つ属性をバラすんですね。それも徹底的に。できるだけ多くバラバラにします。
 
 例えば着物の場合には、文様に含まれる個々の意匠、季節、配色に含まれる色と分量、地紋の物語、らしさ、手触り、八掛の色などのように、着物をスキャンして情報をたくさん取り出します。そうすることで、他のモジュールとのリンクをつくる結び目がたくさんある状態にしておきます。つまり、別様の可能性が生まれる確率を上げておくのですね。
 
 こうして、帯や帯揚げや帯締めも同様にコンパイルしておいて、価格やブランドや産地といった「手に入れた時の属性」から自由にしておくことで、初めて、自分が狙うスタイルに向かって編集できるようになります。
 
 
 
 
*基本は平安時代の襲の色目のように、色を中心にコンパイルしています。
 
 
  • 森山智子

    編集的先達:和泉式部。SE時代にシステムと着物は似ていることに気づき開眼。迷彩柄の帯にブーツを合わせる、洋服生地を帯に仕立てる等、大胆な着こなしをはんなり決める。イシスにも森山ファンは数多い。
    2025年春の多読アレゴリアのクラブ開講に向けて準備中。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。