この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
次の質問を子どもにしてみると、どう答えるだろう。
「ブランコとすべりだい、どっちが たのしい?」
「おばけとゆうれい、どっちが こわい?」
松井路代編集かあさんには、日常の中で、【選択】(※)はかなり編集力をアップさせるんじゃないかという勘があった。
(※)選択…64編集技法の02(収集された情報から必要な一部を引き出す)
【選択】には、実は「今の自分の欲求やコンディションを自覚する」という手順が含まれている。ただ、もじもじと選べずにいる子どもの中では、そこでの方法的な滞留が起こっている可能性もある。大人は無意識に行っているが、本当は「選ぶ」って、経験も必要となる高度な技術なのだ。
そんな編集への理解に端を発して作られたのが、ワークショップ「しつもんをつくろう」だ。(開催は2018年12月2日)
子どもにはむずかしそうに感じるが、やらせてみると大いに盛り上がった。中には大人も答えるのに困る哲学的なしつもんも生まれた。
手順は以下の通り。
徐々に自由度を高めるようにしていくと、子どもたちはスムーズに発想の飛距離を上げていける。
また、しつもんが浮かばない場合のために、しつもんリストも準備した。
どっちが いたい?/ほしい?/ながい?/みじかい? など。
うまく発想が広がらないときのための手すりや逃げ道を用意しておくとよいのは、大人の編集ワークショップも同じだ。
できあがったしつもんは、子どもならではのアイデアがたくさん。
どっちがおおきい? →アンパンマン と ドラえもん
どっちがいらない? →とけい と そうじき
からだのなかでどっちがだしたい? →おしっこ と ち
どっちがくさい? →からすのおしっこ と ライオンのうんち
どっちがじかん? →3じ と とけい
最後にみんなの「しつもん」を読み上げた。
「おしりとうんち、どっちがきたない?」では、どっちもきたない!くさい!と大騒ぎの子どもたち。でも、比べてみると、実はおしりはくさくないよね、という結論に。
また、「アンパンマンとドラえもん、どっちがおおきい?」と聞くと、「アンパンマンは62センチやで」と、ウソかホントか具体的な数字がでてきた。
大人だったら「比べても意味がない」と判断するような選択肢もある。
そんな場合、編集かあさんはこう考える。
ふむふむ、今、この子の言葉の育ちはこのあたりなんだな、この子はこういう感覚、資質を持っているんだな、と。
そして、今後、どんな遊び、どんな言葉、どんな本と出会わせてあげるといいかな、と思案する。
つねに子どもは変化の過程にある。「元・子ども」である親が、こういうときには子どもの世界まで降りていけば済む話なのだ。
子どもの視座にまで降りていくと、親のほうにも新たな選択肢が見えてくる。編集の幸せな連鎖だ。
吉野陽子
編集的先達:今井むつみ。編集学校4期入門以来、ORIBE編集学校や奈良プロジェクトなど、18年イシスに携わりつづける。野嶋師範とならぶ編集的図解の女王。子ども俳句にいまは夢中。
子ども編集学校は動きだすか? 半年やってわかってきたこと【子どもフィールド最新情報】
親子から大人まで、全世代が参加できるイシス子どもフィールド。実験広場として4月にプレ・オープンし、半年が経ちました。親子で編集体験したい人、子どもの発想をのぞきたい人、総勢77名が参加中。子ども編集学校への期待の大きさが […]
七夕まつりのニューノーマル誕生?【七夕エディッツの会レポート】
七夕の願いごと、今年は何を書きましたか? イシス子どもフィールドでは、7月4日(日)にオンライン七夕まつり「七夕エディッツの会」を開催しました。 北海道から沖縄まで、小学生から大人まで、11組が集合。 各地の七夕行事を交 […]
【このエディションフェアがすごい!18】ジュンク堂書店 三宮店(神戸市)
「このエディションフェアがすごい!」シリーズ、第18弾は兵庫県神戸市のジュンク堂書店三宮店。ライターはイシス編集学校師範であり、イシス子ども支局メンバーの吉野陽子さんです。フェアは8月31日まで。 ◇◇◇ […]
おやこ編集ワークの「べからず3選」公開!4/3(土)開催【ツアー@おやこ】
小さなお子さんと親子で編集体験ができるおやこ編集ワーク。回を重ねるごとに参加親子が増加中です。次回開催は4月3日、ISISフェスタオンラインツアーに決定しました! 開催に先駆けて、おやこ編集のナビより、お父 […]
木村月匠からバトンを受け取りました吉野です。入門は2001年9月。9・11の直後に開講した4期守で、「言葉と意味はつねに不即不離をするものだ」という原則を学ぶ日々をスタートさせました。 それまで私は言葉と意味を一対一の関 […]
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。