この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

毎月公開されるEdist記事は30本以上! Edist 編集部メンバーたちから、見逃せない ”イチオシSelection” をお届けします。遊刊エディストをさらに楽しむ「エディスト・セレクション」、どうぞ。
◎遊刊エディスト編集部◎ 吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 川野貴志 師範, 後藤由加里 師範, 上杉公志 師範代, 梅澤奈央 師範代、松原朋子 師範代
─ キャラ立ちスコアでPick!
⦿【このエディションフェアがすごい!36】MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店(大阪市)
ブラタモリ好きは、この記事にハマること間違いありません。
エディションフェアの記事は、全国のエディスト記者がプチ観光案内をしてくださっていますが、なかでもこれは「専門家といっしょに街歩きしたい!」という夢が叶います。一級建築士の山田細香師範が、安藤忠雄建築の《らしさ》をどう読むのか、気になりませんか。
「総合設計制度を採用した公開空地」「低層部は台形に近い五角形平面」などテクニカルターム満載の表現は声に出して読みたいほど。この記事に見る書き手のキャラ立ちっぷりを見ると、《語り手の突出》というのは、自分語りをすることではなく、自らの見方を臆せず打ち出すことだとわかります。
じつは細香師範の趣味は、戦後住宅の模型を作ることなんだとか。
▲1945年から65年ころに建てられた日本の小住宅の模型(山田細香作・提供)
なぜ戦後住宅なのか?その技量は棚づくりにどう活かされたか? それは10月4日まで開催されていたMJ梅田店のフェア記事で謎解きください。
通常1店舗1記事のフェアですが、このMJ梅田店は5本の記事が上がりました。過剰な熱こそ、大阪です。竹島陽子師範による「これは祭りではない。もはや一揆である」という記事では、7chaの法則でプランニングを分節化。
大音美弥子冊匠もフェア開始直後、21冊のエディションの分類軸に注目した「エディションをち・ま・つ・りで分ける」を即アップ。また大阪の設営チームの指という断然点に注目した「ピラニアたちの指」など手フェチには必見の記事も生まれました。やっぱり大阪ダンゼンです。──梅澤 奈央
およそ半年ぶりの「OTASIS」です。待ってました。展示構成がオノマトペ尽しの「ざわつく日本美術」展にもものすごく興味を惹かれるけれど、《松岡正剛がつねづね説いている編集の極意「伏せて開ける」の効能を、目にもの見せてわからせてくれるような展示であった》と松岡校長の方法、編集工学の視点から解説する太田香保総匠ならでは文のカマエとハコビが面白い。ミュージアムの企画にも、それをエッセイする香保総匠の構成にも「型」が息づいている。──金 宗代
⦿イシス人インタビュー☆イシスのイシツ 【魔法使いな植田フサ子】Vol.10
羽根田さんの連載が10回でひとまずの区切りを迎えました。
植田師範は紛う方無き「キャラ立ち師範」の一人ですが、丁寧な聞き取りから、ご本人の可愛らしさと凄みを彫琢されていて、さすがのお手際だと感じました。
よく言われる「アツい」という評価を、表面的に振り回すでもなく、ムキになって拒絶するでもなく、そのラベリングとご本人の距離感を示すとともに、校長の書とともに「やっぱりアツい」と着地させていくのって、かなり繊細な舵切りで書いていらっしゃるんじゃないでしょうか。
感門記事でもご活躍くださいましたが、またどこかでぜひ、羽根田さんの丁寧な取材記事を読みたいなと思います。──川野 貴志
マツコ’s Plus One
羽根田月香さんによる「イシス人インタビュー☆イシスのイシツ」シリーズ
4 後藤’s イチオシ!
多読ジム三冊筋プレスSeason06「旅する3冊」も金代将のつげ義春をもって連載完走。それぞれの読書旅も多種多彩で、一気に海外へ飛んでしまう人、地に足をつけて日本を歩く人など旅のスタイルが異なるところが面白い。
中でも相部さんの《旅》には一際ワクワクしました。
冒頭から黄金時代のパリへひとっ飛び。そこには芸術家が集まるカフェがある。ウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』を見ているような気分でいたら、そこから一気に昭和東京のカフェーへ。パリのカフェを模した日本のそれはエロも売る場所でもある。「カフェ」と言う「図」は「地」によって大変貌を遂げていることの意味を考えているうちに今度は十八世紀ヴェネチアの風景。相部さんとレニエが見た景色を須賀敦子も見ただろうか、など読者の妄想旅もどこまでも広がっていく。
パリ・東京・ヴェネチアと時空間を鮮やかに繋いでいく夏休みの大旅行のような三冊筋プレス。《旅》という非日常が恋しい貴方へ、オススメです。── 後藤 由加里
マツコ’s Plus One?!
⦿ 輪読座】柳田、「口承文芸」なる方法をブルターニュより取り入れる(「柳田国男を読む」第四輪)
バジラ高橋による輪読座「柳田国男を読む」第4回のレポートです。
輪読座では、この春から宮原由紀さんが運営スタッフに加わり、当日のZoomサポートやエディストへのレポート記事を担当してくださっています。
今回の宮原さんの記事は、柳田の民俗学のモデルとなったとされるフランス人の民俗学者ポール・ゼビヨが登場。柳田をして「一国の民間伝承を採集保存し、比較し整理する方法をセビヨからもらった」と言わしめたセビヨの方法とはどのようなものだったのか? バジラ高橋の貴重な図象資料も必見モノですよ。
ちなみに、気になる10月からの輪読座は道元なのだそうです!
宮原さんのこれまでのレポートはこちら↓
今まで知らなかった柳田を発見できるはずです!
【輪読座】21世紀にもつながる柳田國男の方法とは?(「柳田國男を読む」第一輪)
【輪読座】農業政策から民俗学へと辿る柳田の思いとは(「柳田國男を読む」第二輪)
【輪読座】柳田の方言周圏論はどう生まれたのか(「柳田国男を読む」第三輪)
── 上杉 公志
⦿花伝所出ると優しくなれる? 写真でわかる「イシス式指南術入門」開催 【36[花]受付開始】
イシスには2つの奥義がある。離が世界読書奥義伝だとすれば、花伝所は方法の奥義を手に入れる場所である。方法の奥義として、リバース・エンジニアリング、エディティング・モデルの交換、イメージメント&マネージメントを体得する。いや、それだけではない、花伝所を出ると「優しくなれる」のだと言い切ったのがこの記事だ。破バンキシャのウメ子が花伝所錬成師範として腕を振るったエディスト。花伝所申し込みは今からでも間に合う!こちらからGO!── 吉村 堅樹
マツコ’s Plus One???!
花伝所よいとこ、いちどはおいで♪
編集のライトセーバーを取れ イシスのジェダイが飛び立つ35花敢談儀
みなさんのオシは、見つかりましたか?
以上、2021年8月の記事から、編集部イチオシ記事を厳選してお届けしました。
また次回もどうぞお楽しみに~
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
イシス編集学校のアドバイザリー・ボード「ISIS co-mission」(イシス・コミッション)に名を連ねる9名のコミッション・メンバーたちが、いつどこで何をするのか、編集的活動、耳寄りニュースなど、予定されている動静を […]
田中優子の酒上夕書斎|第一夕『普賢』石川淳(2025年5月27日)
学長 田中優子が一冊の本をナビゲートするYouTube LIVE番組「酒上夕書斎(さけのうえのゆうしょさい」。書物に囲まれた空間で、毎月月末火曜日の夕方に、大好きなワインを片手に自身の読書遍歴を交えながら語ります。 &n […]
【多読アレゴリアTV】一倉広美の「イチクラ!」着物をアートでコーデする
芽吹きの春から滴りの夏へ。いよいよ熱を帯びてきた多読アレゴリアの旬をお届けします。松岡正剛より「支度天」の名を受けたダンドリ仕掛け人・武田英裕キャスターと共に、守師範の一倉広美がアシスタントをつとめる『多読アレゴリアTV […]
この春オープンした「多読ジムClassic(25春)」も、数日のアディショナルタイムを経て、5月28日に今シーズンを無事に終了しました。3つのトレーニングお題を一挙出題! という初の試みのなか、好きなお題から、自由に行っ […]
イシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。 6月のDo-Sayをお届けします。今月はイベントを多数予定していますよ!そして、イシス編集学校初のクラブ活動 […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。