この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

毎月公開されるEdist記事は30本以上! Edist 編集部メンバーたちから、見逃せない ”イチオシSelection” をお届けします。遊刊エディストをさらに楽しむ「エディスト・セレクション」、どうぞ。
◎遊刊エディスト編集部◎ 吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 川野貴志 師範, 後藤由加里 師範, 上杉公志 師範代, 梅澤奈央 師範代、松原朋子 師範代
─ キャラ立ちスコアでPick!
⦿千夜千冊エディションでお悩み解決!Q7. 方向音痴ですぐに迷います(40代・女性)
めちゃめちゃ個人的な趣味を申し上げると、人生相談、大好きなんです。
美輪明宏からジェーン・スー、桃山商事から鴻上尚史まで、敬愛する人生相談者が本棚には連なっているのですが、我らが大音美弥子冊匠もマツコ・デラックスと北方謙三のあいだのお席へお招きしたい限りです。
「千夜千冊エディションでお悩み解決」このシリーズもとんでもない腕力です。とくにこの回答。
「地図は文明の申し子ですが、体の右折は野生の叫び声でしょうか」
どうして方向音痴の悩みが、ローマに通じるのでしょうか。道なき道を道路と言い張り、客を振り落とさん勢いで疾駆するような、異国の怪しいタクシー運転手を思わせるしたたかさに快哉を叫びました。すべての悩みが霧散したような錯覚をもたらすアナロジーの飛躍。この大音編集を密かにオートメーションと呼んでいます。アナロジカルな世界を実現する方法はオート化にあると確信したシリーズ記事でした。──梅澤 奈央
⦿【このエディションフェアがすごい!18】ジュンク堂書店 三宮店(神戸市)
千夜千冊エディションブックフェアは全国の約50もの書店に達する勢いで、あちらもこちらも「知祭り」に沸き立っています。
中でもひときわ異彩を放つのがジュンク堂書店三宮店。「ジュンク堂書店の発祥の地」でのフェアだけに店長やイシスメンバーも、気合の入れようが違います。
そのことは、吉野陽子さん執筆の記事中に語られる、店長の堀内理さんの松丸本舗熱、小路千広さん・堀江純一さん・辻井貴之さん・吉野さんによる事前の仕込み、奈良から駆けつけた松井路代さんも加わっての本棚設営の様子からも感じられるはず(続報記事では木藤良沢さんが写真撮影をされています)。
さらに8月に入ってからは書店のTwitterの文書作成も手伝われているとのこと(!)。ここまでやり切る徹底っぷりに脱帽です。
三宮店のフェアは今月末まで。ジュンク堂三宮店とイシス編集学校のコラボレーションをお見逃しなく!。──上杉 公志
⦿未知奥トポス巡りⅤ 記憶を呼び出す舞台―花岡安佐枝師範代の諏訪
を推します。未知奥の記事ですが、花岡さんの出身は信州諏訪。ちょっと「出張記事」なんですが、私も信州出身なので、なんだか同郷の花が紹介されたような誇らしさがあります。花岡さんは文章を読んでも直にお話ししても、強い「らしさ」を感じさせる人ですが、その「らしさ」を根源まで遡るような一本になっていて、ご本人を知る人にとっては非常に詳細な謎解きに触れたような気になる記事です。
「その人の今を作っている過去」を聞き取る手際がとても丁寧で、布置されている具体的なエピソード群の一つ一つに大事な意味があることが、読んでいて自然に得心されます。これは文章を書く技術だけでなく、書き手の林さんの、取材にあたる哲学が熟してきていることも意味しているのではないかと感じています。──川野 貴志
マツコ’s Plus One ~未知奥の風をお届け!
未知奥トポスめぐりシリーズ
4 後藤’s イチオシ!
コロナ禍でラジオが流行っているらしい。かくいう私も最近ポータブルラジオを購入し、テレワーク中も料理中もずっとJ -WAVEを流している。そのうちに聞き流せるラジオというものは日々溜まっていく重みを少し軽くしてくれる作用があることに気づく。そんな時流を読んでなのか、それとも至ってカジュアルな事情からか、突如千夜千冊ファンである林頭吉村とデザイナー穂積によるラジオ記事がスタートした。ラジオなので身構えなくてもよし。読者目線で二人のDJが読みを交わし、問いを立てながら気ままに最新千夜について共読していく。千夜千冊読前のウォームアップにしてもよし、読後のラップアップにしてもよし。想定外に爽やかな声色の二人語りが日々の重みに風穴を開けてくれるかもしれない。
おまけ:それでも飽きたらない方には「セイゴオ千夜語り 一冊一声」をコレクションしてみることをお勧めする。── 後藤 由加里
マツコ’s Plus One?!
─ 多読ラブでPick!
多読ジムを愛してやまない代将です。その代償で家は本で山積みになり、本代がかさんで真夏だというのに懐は肌寒い。そんなチャチな「資本主義問題」(一足早い「金」メダル?『資本主義問題』発刊! をよそに、多読ジムSeason07・夏は激アツ展開中。なんてったって、各スタジオの亭主たる個性豊かないキビキビ冊師たちが熱い。7月のエディストでは、「スタジオしゅしゅ」のむつみ冊師が連載リレー【冊師が聞く】を締めくくり。話し手の多読アスリートは「【三冊筋プレス】そこにはいつも、「〇〇」がある」が公開されたばかりの細田陽子。「三冊筋プレス」は、多読ボードで析匠の小倉加奈子が「発酵ラブする手紙」で先陣きって、ヨーコ冊師こと中原洋子の「神は舞い降りた」、必読必見の三冊筋ニューカマーの「風景の「稜線」を切り取る(若林信克)」、「多層多重な仮想世界の歩き方(山口イズミ)」が続いた。多読のドン、冊匠・大音美弥子も吼える。「千悩千冊」の番外篇「千夜千冊エディションでお悩み解決!」は「Q7. 方向音痴ですぐに迷います」から「Q10. 娘がフランス人の彼を連れてきました」まで、堂々フィナーレを迎えた。今ぼくが所属している「スタジオ茶々々」の冊師は、編集かあさんでお馴染みの”まつみち”こと松井路代。「編集かあさんvol.25 ジャガイモの種子」もお見逃しなく!── 金 宗代
マツコ’s Plus One!!
みなさんのオシは、見つかりましたか?
以上、2021年7月の記事から、編集部イチオシ記事を厳選してお届けしました。
また次回もどうぞお楽しみに~
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
イシス編集学校のアドバイザリー・ボード「ISIS co-mission」(イシス・コミッション)に名を連ねる9名のコミッション・メンバーたちが、いつどこで何をするのか、編集的活動、耳寄りニュースなど、予定されている動静を […]
田中優子の酒上夕書斎|第一夕『普賢』石川淳(2025年5月27日)
学長 田中優子が一冊の本をナビゲートするYouTube LIVE番組「酒上夕書斎(さけのうえのゆうしょさい」。書物に囲まれた空間で、毎月月末火曜日の夕方に、大好きなワインを片手に自身の読書遍歴を交えながら語ります。 &n […]
【多読アレゴリアTV】一倉広美の「イチクラ!」着物をアートでコーデする
芽吹きの春から滴りの夏へ。いよいよ熱を帯びてきた多読アレゴリアの旬をお届けします。松岡正剛より「支度天」の名を受けたダンドリ仕掛け人・武田英裕キャスターと共に、守師範の一倉広美がアシスタントをつとめる『多読アレゴリアTV […]
この春オープンした「多読ジムClassic(25春)」も、数日のアディショナルタイムを経て、5月28日に今シーズンを無事に終了しました。3つのトレーニングお題を一挙出題! という初の試みのなか、好きなお題から、自由に行っ […]
イシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。 6月のDo-Sayをお届けします。今月はイベントを多数予定していますよ!そして、イシス編集学校初のクラブ活動 […]
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。