この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

誕生日にケーキを食べ、ろうそくを吹き消すのはせいぜい小学生まで。大人の見本、松岡正剛校長には平常心で読書と煎餅を渋茶で満喫していただきたい。そんな5選、お口に合いますかどうか。
◆ぽんぽん煎餅味「編集かあさん 食べてよいものだめなもの」
「紅茶に浸したプチット・マドレーヌ」だけが記憶の味ではありません。ハイハイの昔、手の届く限りのものを口に入れた時代、母のニットから落ちた綿ぼこり混じりの<ぽんぽん煎餅>のカケラこそ、ものごころつく前の、狩猟採集の成果。免疫ネットワークを養ってくれた他者との出会いを描出したのは広島の浦澤美穂師範。
それでは、「じゃがりこ」3連発。じゃがりこと言えば、『パンセ』な新幹線だけに、旅のお供のイメージが強いですね。
◆じゃがりこたらこバター味【このエディションフェアがすごい!40】「カモシカ書店(大分市)」
新刊も古書も、ほろ苦ブレンドも濃厚ガトーショコラも楽しめるカモシカ書店は岩尾洋装店の2階。店に収まり切れない古書が洋装店の店先にも横にも並ぶ景色が壮観ですが、大分のアーケード商店街では案外日常的? ほぼ手造り店内のメインは「軍艦」。ブックフェアがそれを率いる灯台と見立てたレポーターは田中さつき師範代。
◆じゃがりこじゃがバター味「関西弁のミク太郎 憧れ力で起動する編集少年(イシスをDAN ZENにする7人【iGen004】)」
初音ミクを知らなかったミク太郎師範代の凄さは、地と図を反転させつづけるところ。本記事でもその面目をいかんなく発揮。立ち上げたい企画「七輪囲み」も大概だが、『情報の歴史21』の注目歴象が1992年とは何事ぞや。新版追加の1996年以降に絞って答えんかい! と老婆心はおののくばかりであった。貴公子上杉番記者と双璧のシレッとズレ加減はじゃがにじゃがを重ねたじゃがバター味か。
◆大人のじゃがりこわさび醤油味【三冊筋プレス】「”つげ”ザーしようぜ〜! 《A面》」
「旅する三冊」をつげ義春尽くしで時空間ともに堂々巡らせてみせた金副編集長。シュールな私小説タッチで粘り着く暑苦しさを再現させ、出口のない箱蒸し風呂に入ってしまった気分の読者に「日々絶筆」な井上有一の書だけでなくタイガー立石までぶつけていく。その手腕、大人ならではの2段階が効いてきます。
お口直しは、塩煎餅とまいりましょう。はい、三原堂でご準備させていただきました。
読書の多様性を語るのに、<塩煎餅>がここまで引き合いに出された集団がかつてあったでしょうか? O.ヘンリは木炭デッサンに食パン消しゴムという画家の習慣を皮肉な短編に編み、堀江画伯は天才漫画家町子さんの出不精な性向に注目。アウトプットすればするほど情報が自然に入ってくる法則に、旅嫌い校長の面影が二重写しされるのでした。
大音美弥子
編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。
「情報はひとりでいられない」。[守]入門のしょっぱなで出会ったことばが何度も胸に去来した。花と歌を楼主<泣き虫セイゴオ>に捧げようという願いに始まった5月11日のISIS FESTA【花歌果の戒】。参加者はたくさんのセイ […]
【参加者募集】2025母の日は、編集の父セイゴオを偲ぶ「花歌果の戒(かかかのかい)」へ、本楼へ
生と死はいつも背中合わせの裏おもて。背後の死を通じて目前の生をゆたかにする【終活読書★四門堂】(多読アレゴリア)より、特別イベントのお知らせです。 5月第二日曜の11日午後、豪徳寺赤堤のISIS館本楼に […]
【多読アレゴリア:終活読書★四門堂】春の門は花と詩がいっぱい!
四つのシをめぐって、あれやこれやとアレゴリア、「終活読書★四門堂」も<冬:私>の季節はそろそろ大団円。バトンタッチに向けてスタンバイOKの<春:詩>担当の塚田堂守より、お誘いメッセージをお届けします。 […]
去ること、多読ジムseason19では「三冊筋プレス◎アワード」が開催されました。お題は「古典に親しむ三冊」。今回は古典にちなんで「八犬伝」仕立ての講評です。どうぞお楽しみに。 千夜千冊エディションvol […]
【MEditLab×多読ジム】欲張りなドクトルになるには(大音美弥子)
多読ジム出版社コラボ企画第四弾は、小倉加奈子析匠が主催するMEditLab(順天堂大学STEAM教育研究会)! お題のテーマは「お医者さんに読ませたい三冊」。MEdit Labが編集工学研究所とともに開発したSTEAM教 […]
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。