この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

今日で1週間の、おめでとうございます。明日は多読ジムseason05の開幕日です。本の世界から幸せと出会いを運ぶサッショーこと大音が、おみくじ本第七弾を名残惜しくもお届けします。
七人目、ジム最終日の午後になっても諦めない読衆さんがいました。【スタジオだんだん】福澤美穂子さんです。編集学校のあちこちを韋駄天走りでご活躍、ご存じの方も多いイシスの花形ですよね。2020年を託した本は『子どもの本のもつ力』清水真砂子/大月書店+『方法文学』松岡正剛/角川ソフィア文庫。
2021年への抱負、聞いてみました:
2020年は多読ジムに通った一年だった。特に後半「生命に学ぶ」ことに慣れ親しみ、そのおもしろさ、新鮮さを実感する糸口をつかむことができ感謝している。代わりに浮上してきたのが、歴史がアタマに入っていない、という悩み。そこで2021年は「歴史」を意識してジム通いしたい。現在だけでなく、幅のある時間の流れの中で広くモノゴトを見ることができるようになりたい。あらゆるものにアーキタイプを感じ、異なるもののあいだに関係を発見するワクワクの毎日が待っていますように。
うーん、噂の通り欲が深い(笑)。そのワクワクが山となるか、海となるか。ガラガラ・ガンガンガン!
おお、末吉? いや、推吉か。うーん、残り物に福とはいかないようですが、弁天さまもオランピアも「一陽来復」「推理肝心」と口を揃えてますっ。
『緋色の研究』 アーサー・コナン・ドイル著・延原謙訳/新潮文庫・鮎川信夫訳/講談社文庫・阿部知二訳/創元推理文庫
628夜では阿部知二訳が挙げられていますが、リンク切れです。現在このバージョンはKindleのみで流通、代わりに深町眞理子さんや日暮雅通さんの新訳が登場しています。薄い本なので、何通りか比較してみるのもいいですね。ともあれ本作はインドから帰国したワトスン博士がベーカー街221番地Bに「風変わりな友人」と住み出した記念の第1作。二人は1881年にルームシェアをするんですね。ワトスンは、友人が「地球が太陽のまわりを公転している事実を知らない」ことに驚き、「今それを教えてもらったから、今度は早速忘れるように努力しましょう」と告げられて二度びっくりします。
子供の頃はホームズの「推理」の力もスーパーヒーローなら当たり前と思っていたはずですが、今読むとそのアブダクションが観察+結合そしてリヴァース・エンジニアリングの賜物であることがわかります。勉強熱心な福澤さんにとっても、きっと「関係発見」のための役立つ道具になるはず。『シャーロック・ホームズの思考術』マリア・コニコヴァ/ハヤカワノンフィクション文庫もサブ・テキストにどうぞ。
福澤さんからエディストの皆さんへの伝言は:
…運勢:推(理に)吉(あり)
(本書からのお言葉)
「では、復習するんですな──たしかにその必要がある。太陽の下に新しきものなし、さ、皆、いつか以前におこっている」(阿部知二訳)
☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡
以上、7本のおみくじ本は、不透明な2021年に幸を招いてくれる本ばかり!
今年も、読まな許しまへんでー。
大音美弥子
編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。