七福神だよ、迎春多読な招福おみくじ本!(4)

2021/01/07(木)08:00
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 七草粥、おめでとうございます。今日も本の世界から幸せと出会いを運ぶサッショーこと大音が、おみくじ本第四弾をお届けします。


●本の中だけでも浮世離れた時間を♪

 

 四人目におみくじ祈願に訪れられたのは【スタジオこんれん】椿和恵さん。受付〆切を5日ぶっちぎっての参拝が、クリスマスを尻目に書院を賑わせてくれたのも今は懐かしい昔話です。2020年を託した本は『自己創出する生命』普遍と個の物語/中村桂子/哲学書房+『カウンセリングの実際』河合隼雄/<心理療法>コレクションⅡ/岩波書店でした。

 

2021年の抱負は:


 言葉を深めつつ広げたい。4月に息子が大学、娘が高校進学予定で私は子離れの季節。その後は私の時間が増えていきそう。その時間で仕事の言葉、物語の言葉を豊かにしていきたい。テレワーク・副業と働き方はコロナで変化が加速し、実務的な時間に埋めつくされそうな気配。だから本の中だけでも浮世離れ的な時間を持ちたい。心の高まりに言葉を乗せて表情豊かな年になりますように。

 

 

  それではよろしくガラガラ・ガンガンガン!

 

 「犬吉」のおみくじ出ましたー。こちらは寿老人さまが連れてきたグレート・デーン? いや、ご老人、引っ張られていましたね。

 

『友だち』シーグリッド・ヌーメネス著、村松潔訳/新潮社

 

 

 語り手は、最愛の男友だちを自殺で亡くした初老の作家、<わたし>。彼女の元に彼の残した巨大な老犬がやってくる。そんな世界定めから浮かぶのは、自己憐憫に溢れたスイートな物語ですが、そうではありません。ストーリーはほとんどないに等しく、読者は彼女と一緒にその考えの中へまっすぐに招かれます。考えの中には古今の多くの作家や小説の言葉・場面が去来します。

 

 それらこそが彼女の友だち? ない暇を盗んでは物語を読んでいるわたしたちの友だち? 声や言葉に出すことなく人や犬のアタマのなかで、ひそやかに立つさざ波こそが表情豊かな言葉なのかもしれません。良い一年と、さらに良い十年を!


…運勢:犬吉(心願成就は尻尾の向きと相談ですね♪)

(本書からのお言葉)

お伽話を書きなさい。何人かの女性たちにとって、それは復讐を夢見るチャンスだった。


  ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡   ☆ 彡

  • 大音美弥子

    編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。