この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

あけましておめでとうございます。今年もサッショーしまっせ、大音美弥子です。どうぞよろしくお願いいたします。
おかげさまで多読ジムも2年目。日頃の感謝を込めて、書院名物の一つ「おみくじ本」を大々的に公開することにしました。<三冊筋プレス>というエクササイズを行うために必要な三冊のうち一冊を、おみくじの偶有性に頼ろうというセレンディップな試みです。
「千悩千冊」では、サッショーが「悩みごと」に答えて一冊を選ぶ形式ですが、今回は読衆の皆さんの「今年の抱負」を後押しして、2021年に幸を招く一冊を選んでいます。最後までご覧くださると、きっと大いにあやかれますよ。
おみくじ本祈願の一番手は【スタジオ栞】所属の<カステラ一番>さん。その正体は立ち姿の美しい、あのお方。12月は毎週の汁講接待でzoom漬けだった、というとお判りの方も多いでしょうか。2020年を託した本は、『オメラスから歩み去る人々』(『風の十二方位』収録)アーシュラ・K.ル・グィン/ハヤカワ文庫+『ランスへの帰郷』ディディエ・エリボン/みすず書房でした。
2021年に望む抱負は:
マスク生活に慣れません。私は今までマスクをすることがほとんどなかったので、鬱陶しくてなりません。顔にぺったり張り付いたマスクのせいで、表情がなくなったように思います。そのせいか喜怒哀楽も薄くなって、モノゴトに対する反応がどんどん淡泊になっているような気がします。心が動くから表情が動くのか、表情が変わるから心が変わるのか。いずれにせよ、来年は情感豊かに、気持ちを顔にも振る舞いにも表してゆきたいです。
マスクを突き破る情感を願って、行ってみましょう。ガラガラ・ガンガンガン!
はいっ、最初の大吉本は、大黒さまが持ってきてくれました。2018年新国立劇場での『トスカ』画像はおまけでしょうか。
『言語の七番目の機能』ローラン・ビネ著・高橋啓訳/東京創元社
「驚愕の記号学的ミステリ」と作品紹介にあるように、記号学者で哲学者のロラン・バルトが死亡した交通事故をめぐって<相棒>よろしく「これは事故じゃない! 誰がバルトを殺したのか?」と警視と記号学者の二人が捜査していくお話。バルトの死と「言語の7番目の機能」との関係は? (そもそも言語の機能とは「情動」「能動」「指示」「交話」「メタ言語」「詩」の六つだとロシアの言語学者ヤコブソンが提唱しています)捜査陣以外はほぼすべて実在の(フーコー、デリダ、エーコ、クリステヴァ、ギベール、ミッテラン、etc.etc.)という豪華な顔ぶれ。著者は『HHhH─プラハ、1942年』でゴンクール賞最優秀新人賞を受けた1972年生まれの俊英。この秋来日の予定もあったものの、コロナ禍でオンラインになりました。七番目の機能を味方に、より豊かな情感の世界へ!
<カステラ一番>さんからエディスト読者の皆さんへの伝言は:
…運勢:大(声あげて)吉
(本書からのお言葉)
諸君、言葉(ロゴス)に栄光あれ! 弁証法万歳! さあ、祭典の幕を開けようではないか! 言葉(ヴェルブ)のご加護が諸君にあらん事を祈って!
☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡 ☆ 彡
大音美弥子
編集的先達:パティ・スミス 「千夜千冊エディション」の校正から書店での棚づくり、読書会やワークショップまで、本シリーズの川上から川下までを一挙にになう千夜千冊エディション研究家。かつては伝説の書店「松丸本舗」の名物ブックショップエディター。読書の匠として松岡正剛から「冊匠」と呼ばれ、イシス編集学校の読書講座「多読ジム」を牽引する。遊刊エディストでは、ほぼ日刊のブックガイド「読めば、MIYAKO」、お悩み事に本で答える「千悩千冊」など連載中。
「情報はひとりでいられない」。[守]入門のしょっぱなで出会ったことばが何度も胸に去来した。花と歌を楼主<泣き虫セイゴオ>に捧げようという願いに始まった5月11日のISIS FESTA【花歌果の戒】。参加者はたくさんのセイ […]
【参加者募集】2025母の日は、編集の父セイゴオを偲ぶ「花歌果の戒(かかかのかい)」へ、本楼へ
生と死はいつも背中合わせの裏おもて。背後の死を通じて目前の生をゆたかにする【終活読書★四門堂】(多読アレゴリア)より、特別イベントのお知らせです。 5月第二日曜の11日午後、豪徳寺赤堤のISIS館本楼に […]
【多読アレゴリア:終活読書★四門堂】春の門は花と詩がいっぱい!
四つのシをめぐって、あれやこれやとアレゴリア、「終活読書★四門堂」も<冬:私>の季節はそろそろ大団円。バトンタッチに向けてスタンバイOKの<春:詩>担当の塚田堂守より、お誘いメッセージをお届けします。 […]
去ること、多読ジムseason19では「三冊筋プレス◎アワード」が開催されました。お題は「古典に親しむ三冊」。今回は古典にちなんで「八犬伝」仕立ての講評です。どうぞお楽しみに。 千夜千冊エディションvol […]
【MEditLab×多読ジム】欲張りなドクトルになるには(大音美弥子)
多読ジム出版社コラボ企画第四弾は、小倉加奈子析匠が主催するMEditLab(順天堂大学STEAM教育研究会)! お題のテーマは「お医者さんに読ませたい三冊」。MEdit Labが編集工学研究所とともに開発したSTEAM教 […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。