別日本に向かって – 近江ARS TOKYO 裏舞台の10shot

2024/05/19(日)12:49
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 近江ARS ―― その姿が、いよいよTOKYOでお披露目される。

 

 滋賀県大津市のびわ湖ホールで開催された近江ARSキックオフ「染め替えて近江大事」から2年強。近江ARS TOKYOは「別日本があったって、いい。」と銘打ち、2024年4月29日、東京赤坂の草月ホールで開催された。チケットは3階席まで全席完売。出演者15名、スタッフは約100名。近江ARSメンバーは心尽くしのもてなしで客を迎え、松岡正剛は全身全霊で舞台に立つ。

 

 本番に向かうまでの前日と当日のリハでのシーンを切り取り、裏舞台の様子を10shotでお届けします。

 

 

4月28日(日)前日リハ

午後3時から始まった舞台リハ。客席からディレクションをする松岡。出演者のパフォーマンス、裏方スタッフの動向まで、細部を徹底的に仕上げていく。

 

役目はディレクターのみならず。自身の出番に備えて、手書きのレジュメに何度も目を通し、舞台の片隅で準備をする。

 

出演者の一人であるドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダさん。歌声が会場に響くと、その場にいる全員の気持ちが舞台に引き寄せられる。ピアノ伴奏は上杉公志がつとめる。

 

意外な選曲で松岡を驚かせたのは本城秀太郎さん(三味線演奏家・作曲家/中央)と本城秀慈郎さん(三味線演奏家/左)。三味線糸で作られた琴屏風が舞台をさらに演出する。

 

福家俊彦(天台寺門宗・総本山三井寺長吏/左)は松岡とともに近江ARS TOKYOの全体監修を担う。スペシャル仏教トークコーナーの仕切りに向けて台本を読み込む。

 

24年前、松岡との初仕事も草月ホールだったことを冒頭挨拶で明かした近江ARSプロデューサー和泉佳奈子(百間)。「ついに松岡さんが動いたんです」万感の思いを込めたスピーチで近江ARSの成り立ちを語る。

 

5時間を超える舞台リハを終え、帰路に着いたのは午後10時半。いよいよ明日本番を迎える。

 

 

 

4月29日(月)当日

バロック的な多焦点の黒球がカバーを飾る新刊『[近江ARSいないいないばあBOOK]別日本で、いい。』(春秋社)もお披露目となり、ロビーで客を迎え入れる。

 

同じくロビーではスタッフが集い、段取りを指差し確認。裏方統括を担うのは、近江ARSメンバーでもある[守]番匠 阿曽祐子である。

 

会場を彩るのは書籍のみならず。近江ARSメンバー 芝田冬樹(叶 匠壽庵)は、「本の傘」と名付けられた和傘を控える。龍門節会に集ったメンバーによる格別の一冊が何かの決意表明のように記されている。

 

最終舞台リハを終えた松岡が向かった先は、地下駐車場。社用車の後部座席で手書きレジュメを手に、自身の語りを入念に練習する。長浜出身の父について語っているのが遠くで聞こえた。

 

いよいよ本番直前。Yohji Yamamotoの衣装に着替え、黒革のハイカットブーツでブーツストラップする。前身頃には「私に刀をくださいな。」の文字。Yohjiの衣装が松岡にとっての刀になる。

 

午後1時30分。開演ブザーが鳴り、近江ARS TOKYOがはじまる。松岡の第一声は「ノスタルジア」。そのキーワードは手書きレジュメに太字で書かれていた。

 

【関連記事】

近江ARS TOKYO|別日本へ向かって – フォトレポート#1(百間サイト)

近江ARS TOKYO|別日本へ向かって – フォトレポート#2(百間サイト)

 

 


 4月29日「近江ARS TOKYO」
@草月ホール(赤坂・東京)


「別日本があったって、いい。――仏はどこに、おわします?」と銘打ったこの会は、ドラァグクイーンから僧侶まで、茶人から職人まで、各界のスペシャリスト
にご登場いただき「別様の日本」を交わし合いました。会場では近江ARSメンバーが懸命のもてなしで来場者を迎えました。



◎出演|
松岡正剛、福家俊彦、末木文美士 、本條秀太郎、田中優子、小堀宗実、ドリアン・ ロロブリジーダ、稻田宗哉、加藤巍山、佐藤弘夫、挾土秀平、佐藤 優、米澤 泉、鷲尾龍華、樂 直入、和泉佳奈子、小堀宗翔、本條秀慈郎、森山未來 (映像出演)

◎主催|近江ARS
◎プロデュース|百間
◎後援|滋賀県

◎企画|HYAKKEN、EDITHON   

◎空間|中村碧
◎デザイン|佐伯亮介  
◎編集|広本旅人
◎映像|MESS
◎中継|横谷賢一郎
◎伴奏|上杉公志

◎進行|ポマト・プロ、三浦ニュールーム

◎照明|MGS照明設計事務所
◎菓子|叶 匠壽庵
 
◎酒 |冨田酒造
 
◎珈琲|CROWD ROASTER
◎室礼|三井寺、石山寺、六角屋、丸三ハシモト 
◎表方|長浜まちづくり
◎裏方|中山倉庫、中山事務所  

 



  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。