東浩紀からシモーヌ・ヴェイユまで 47[守]先達文庫(前半)【77感門】

2021/09/04(土)16:19
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「松岡校長は、います!」

鈴木康代(学匠)は、卒門式の冒頭で声を大にした。学衆は訝しんだのだ、「松岡正剛校長は偉大すぎます。ほんとうにいらっしゃるんでしょうか」と。

 

今期47[守]のダンゼンな特徴は、どうしてイシスの仕組みごと気にする学衆が多いということだった。師範代の指南がすごい、師範の応接がすごい、というその断点から全部の仕組みを見ようとする視野の高さが光った。

 

鈴木は、1週間前に更新された1780夜『エゾテリズムの思想』に記された「非合理なものがとても気になる」を引用しながら、今期の探求意欲を讃えた。

 

▲福島から、昨夜新幹線で駆けつけた鈴木。

「イシスに入って辞書を2冊買いました。子どものころは辞書を引くのが好きでした。でもそれを忘れていたんです」という学衆の声をエモーショナルに語り直し、司会川野が切なさに胸を詰まらせた。イシスの稽古に、本は欠かせない。

 


 

77回感門之盟「DAN ZEN イシス」で、47[]を終えた師範代21名に「先達文庫」が授与された。編集学校では一期を全うした師範代に、松岡校長が自ら本を選んで贈る。師範が師範代をねぎらう感門表を授与し、先達文庫を託された鈴木康代学匠が、師範代を称えながら一冊一冊手渡していく。

 

▲画伯堀江による「進撃の巨人セイゴオ」に見守られながら、文庫を受け取る田中。

 

 

◆皆川滋師範代(谷中エッチング教室)

 『無心ということ』(鈴木大拙/角川ソフィア文庫)

 

 

清水幸江師範代(一客一亭教室)

 『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』(シモーヌ・ヴェイユ/河出文庫)

 

柳瀬浩之師範代(ジャイキリ魔球教室)

 『波紋と螺旋とフィボナッチ』(近藤滋/角川ソフィア文庫)

 

田中香師範代(縞々BPT教室)

 『うたの動物記』(小池光/朝日文庫)

 

中村慧太師範代(どんでんコマンド教室)

 『クォンタム・ファミリーズ』(東浩紀/河出文庫)

 

竹川智子師範代(カンブリア一群教室(速修))

 『ピタゴラスと豆』(寺田寅彦/角川ソフィア文庫)

 

関口泰由師範代(グッチ金輪際教室)

 『観音さま』(鎌田茂雄/講談社学術文庫)

 

◆北條玲子師範代(ピアソラよろしく教室)

 『小さき者の声』(柳田国男/角川ソフィア文庫)

 

長島順子師範代(柄々八犬伝教室)

 『生命誌とはなにか』(中村桂子/講談社学術文庫)

 

中原洋子師範代(アレンジ万端教室(速修))

 『<脳と文明>の暗号』(マーク・チャンギージー/ハヤカワノンフィクション文庫)

 

多読冊師を兼任しながら速修コースを率いたジャズシンガー中原は「編集に恋をしましょう」と美しく歌いかけ、タンゴダンサー北條は、書けないことを書こうとする学衆から回答が届くことがあまりにも幸せだったと涙を拭った。

 


写真:上杉公志

文:梅澤奈央

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。