この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

本をきっかけに、問いを深める。ゆるくカジュアルに、世界知と遊ぶ。
「ほんのれんラジオ」の最新シリーズが公開されました!
2024年5月のテーマは「ホントの自分? アバター時代のたくさんの私」。これまで、「こども力」や「憧れの大人像」を考えてきたほんのれん編集部。「大人」を掘り下げていくなかで、これを考えてみたい!と突き当たったのが「ウソとホント」や「自己像」をめぐる問題でした。みなさんは、どんな自分に“リアリティ”を感じますか?
▼エピソード
5月のテーマは「ホントの自分?」/アバター時代のたくさんの私/編集部が選んだ旬感本5冊/ニセ?盛り?アバター?分人?そして…『擬』/どうして「ホントの自分」を考えるのか/本音と建前、嘘、フェイクニュース/盛れないアプリ「BeReal」がどうして人気なの/カメラマンに指示する4歳児/あったあった、学校の廊下に張り出される写真!/写真と自己像の関係/森村泰昌『自画像のゆくえ』/鏡によってつくられた自己像/自分の顔、見たことある?/ニセモノをめぐる本たち/リアルな自分の写真に戦慄したニレ編集長/オレは「リアル」より「リアリティ」派/不気味の谷現象/ないはずの手が痛い?/フィジカルもリアルじゃないかも
出演:ほんのれん編集部 ニレヨーコ、はるにゃ、おじー、ウメ子
今月のEditor’s Note/編集長 仁禮洋子
スクリーン越しの自分
BeReal.というSNSが若者に人気だそうだ。
BeReal.は「盛ってない、ホントの自分」を見せる画像・動画アプリ。 1日1回、通知が来たら、2分以内に「今の自分」を撮影して投稿するルール。加工は不可。寝起きの自分や散らかった自室が晒されることになる。ほかのSNSが「盛り」に溢れるなかで「リアル」は新鮮なのかもしれない。しかし、「ホントの自分」って何だろうか。
15-16世紀のヨーロッパでは「自画像絵画」が急激に増えた。背景にあったのは「鏡」の製造技術の向上だ。それまでは覗き込んでも「おぼろげ」にしか見えていなかった自分が、クリアに見えるようになった。そして人々は「自分とは何か」を問うようになった。道具によって自己認識が大きく変化したのだ。デジタルツールの発達で、自己認識は、さらに劇的に変容していくだろう。自分とは全く異なるアバターを多数使い分けるようになると、アレもコレも私、になるのかもしれない。5冊の旬感本をたよりに「ホントの自分? 」を考えてみたい。
▼「ほんのれん」旬感本はこちらの5冊!
『「ニセの自分」で生きています─心理学から考える虚栄心』稲垣智則(著)明石書店 2023
『「盛り」の誕生─女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』久保友香(著)太田出版 2019
『アバターと共生する未来社会』石黒浩(著)集英社 2023
『私とは何か─「個人」から「分人」へ( 講談社現代新書)』平野啓一郎(著)講談社 2012
『擬 MODOKI─「世」あるいは別様の可能性』松岡正剛(著)春秋社 2017
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\ 耳より情報 /
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Business Insiderでも、ロールモデル不在時代の「大人」について考えています!
ロールモデルが見つからない…。10冊の本で考える、理想の大人像
2024年4月からの記事は、全編無料公開中。
今月から、ほんのれん編集部4名が顔写真入りになりました。ぜひご覧ください。
●スマニュー+でも連載中!↓のバナーからどうぞ。こんな記事もあります。
「不適切」が時代を作る!炎上芸術家はなぜ、時代の 革命児になったのか
ほんのれん編集部
編集工学研究所×丸善雄松堂が提供する一畳ライブラリー「ほんのれん」の選書やメディア制作を手掛けるメンバー。関西弁で跳ねるデザイン知カンガルー・仁禮洋子(ニレヨーコ)、小鳥の風貌ながら知的猛禽類な山本春奈(はるにゃ)、昭和レトロを愛する果敢なコンパイル亀・尾島可奈子(おじー)、2倍速で情報収集する雑読チーター・梅澤奈央(ウメコ)ほか。ほんのれんラジオは毎週水曜更新中。ほんのれん編集部公式noteにこれまでのアーカイブを蓄積してます。https://note.com/honnoren/
「正しさ」ってどこまで正しい?炎上、ポリコレ、etc。なんでこんなに息苦しいのか。
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コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。