この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

弘法大師空海は曼荼羅を立体曼荼羅として密教の教えを具現化した。
HCU最終講の本楼に現れたのは”立体千夜千冊”とも言えるような本の林立。前日リハから当日の塾長最終講義の直前まで松岡塾長自ら選書、配置、見せ方まで何度も手を入れ、「世界は書物、書物は世界」であることを本の顔、厚み、存在感とそれらの群像をもって表象した。
『孤客記 背中のない日本』(作品社)から『日本文化の核心』(講談社現代新書)に至るまでの数々の自著に加えて、ブビンガに顔を揃えたのは以下の本である。
『社会の社会1・2』 ニクラス ルーマン(法政大学出版局)
『偶発性・ヘゲモニー・普遍性』ジュディス・バトラー、エルネスト・ラクラウ、スラヴォイ・ジジェク(青土社)
『精神の生態学』グレゴリー・ベイトソン(新思索社)446夜
『知と存在』マイケル・ポランニー(晃洋書房)
『アクシデント 事故と文明』ポール・ヴィリリオ(青土社)
『昨日までの世界 上・下』ジャレド・ダイヤモンド(日経BP)
『銃・病原菌・鉄 上・下』ジャレド・ダイヤモンド(草思社)1361夜
『ウイルス・プラネット』カール・ジンマー(飛鳥新社) 1737夜
『免疫の反逆』ドナ・ジャクソン・ナカザワ(ダイヤモンド社)
『免疫複合』エミリー・マーチン(青土社)
『未来の考古学I・II』フレドリック・ジェイムソン(作品社)
『カルチュラル・ターン』フレドリック・ジェイムスン(作品社)
『反脆弱性 上・下』ナシーム・ニコラス・タレブ(ダイヤモンド社)
『人新世とは何か』クリストフ・ボヌイユ、ジャン=バティスト・フレソズ(青土社)
『存在の大いなる連鎖』アーサー・O・ラヴジョイ(晶文社) 637夜
『グーテンベルクからグーグルへ』ピーター・シリングスバーグ(慶應義塾大学出版会)
『ウェットウェア』デニス・ブレイ(早川書房)
『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』最相葉月(ポプラ社)
危機を管理したり、排除するのではなく、小さな危機を入れておかないと免疫が反逆する。ノイズや異質である非自己(not self)を入れない限り、自己(self)はつくれない。それが免疫というシステム。
日本の社会は平均社会になり、異質を排除してきた。しかし、異質を排除することは差別となり、民主主義的にまずい。平等が重んじられ異質という見方を止めよう、異質を感じないようにしようとしてきたことに大問題がある。
稽古と本番、平時と有事を断絶するのではなく、そのあいだに分け入りながら組み合わせ、組み立てていくこと。自分の中にある非自己を大切にすること。
15期にわたり、AIDAを紡いできたHCUは次期に向けてトランスフォームするようだ。一区切りとなる最終講でリアルとオンラインのあいだを繋いでいたのは、塾長と塾生のあいだを繋いでいたのは、インターフェイスとなった本の顔たちであった。
後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。