この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「ナツセン」に続く第2弾として「アキセン(秋に読みたい千夜千冊)」がやってきました。今回は49[破]師範代10名がこの秋に読みたいとっておきの一夜を選びます。ISIS編集学校のInstagramとFacebookで先行して連載公開したアキセンを遊刊エディストでは一気にお披露目します。今まさに教室で指南を繰り広げている師範代がセレクトした本はどれもじっとしていられない一冊です。それゆえエディストカメラ部も前回に増して外撮影に挑戦しました。アキセン本はおでかけが似合う。
選本:49[破]師範代
撮影:エディストカメラ部
選者 古澤正三(49[破]ザリガニ脱走教室 師範代)
◆0464夜『虫をたおすキノコ』吉見昭一
子供の頃、冬虫夏草を見たことがある。小学生のとき担任の先生が毎日書きなさいと渡してくれた「さわやかノート」に好きなことを書くとたくさん感想を書いてくれたことを思い出した。冬虫夏草と松岡校長の特製エンジンの話、たまりません。
写真 木藤良沢
選者 宮坂由香(49[破]おにぎりギリギリ教室 師範代)
◆1687夜『日本の伝統 発酵の科学』中島春紫
普段口にする醤油や味噌の原型を辿り、麹菌の働きを知って、発酵を促す微生物に思いを馳せてみる。腐っていると思う「それ」も、地を変えると発酵なのかもしれない。食欲の秋を目で味わってみよう。
写真 後藤由加里
選者 大塚信子(49[破]唐傘ダムダム教室)
◆1523夜『バッハ 神はわが王なり』ポール・デュ=ブーシェ
聴きながら読む『今夜のバッハは「まだまだバッハ」です』。ピアノの複雑華麗な旋律と、取り残されるも頑なな人生が、音楽の集大成を作り上げました。「傷つきやすさ」を湛えたバロック音楽が秋によく似合うのです。
写真 木藤良沢
選者 安田晶子(49[破]ヤマネコでいく教室 師範代)
◆1710夜 『ダロウェイ夫人』 ヴァージニア・ウルフ
秋の夜長、虫の声を共に読みたいのは、仄暗さの中に放たれた無の一滴。日常と喪失を長い一日に重ね、書くことを渇望したウルフの面影に会いたくなる。文学賞候補に女性が並ぶ時代にも疼く、ジェンダーロールの創を庇いながら。
写真 牛山惠子
選者 田中香(49[破]縞状アンサンブル教室 師範代)
◆1297夜『本の本』斎藤美奈子
秋とくれば読書。本の辞書のようなこちらをオススメしましょう。この著者の筆はたまらなくなめらかにリズミカルでかつ鋭い。既読本も、もう一度読んでみたくなる。千夜千冊とともに秋の読書リスト作成にどうぞ!
写真 後藤由加里
選者 石黒好美(49[破]まんなか有事教室 師範代)
◆1192夜 『DJバカ一代』高橋透
夜が長くなる季節に、ディスコの千夜をどうぞ。最近のイシス編集学校は品行が方正すぎやしないかと欲求不満気味のアナタ。「闇」や「毒」をあやしく演出するプランニングに遊んでみませんか。
選者 西村慧(49[破]臨刊アフロール教室 師範代)
◆0827夜『スタンド・バイ・ミー』スティーヴン・キング
あの夏の日を思い出すなら、少し肌寒くなった今頃の季節がいい。少年が大人になるイニシエーションの旅の記憶。ずっと死の影がまとわりつく物語は、同タイトルのベン・E・キングの名曲を伴って何度でもよみがえる。
写真 林朝恵
選者 福井千裕(49[破]ちちろ夕然教室 師範代)
◆0546夜『雨の念仏』宮城道雄
少年期に失明した宮城道雄の心を慰めてくれたのは、音楽や春夏秋冬の音であった。暗闇のなかで声を見、音に生きる者の「余人を絶する感覚」には遠く及ばずとも、秋風に吹かれながらただ静かに耳を澄ませてみたい。
写真 後藤由加里
選者 古谷奈々(49[破]藍染発する教室 師範代)
今年もあっという間だったなぁ。肌寒くなると、心もとなくなってくるのだが、心敬は「氷ばかり艶なるはなし」と言ってのける。花が散り、緑が枯れ、日が暮れていく季節や景色にしかない味わいを教えてくれる千夜千冊。
写真 阿久津健
選者 齋藤彬人(49[破]赤ラン十徳教室 師範代)
◆0110夜『華氏451度』レイ・ブラッドベリ
手元には禁書が片端から燃やされる近未来、足下には何事も炎上しかねない現代電子社会。わたしたちの自然発火点はどこまで来てしまったのか。たっぷりとした古い精神にお化けを呼び覚ます作法をまねびたい。
写真 阿久津健
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後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。