この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

ISIS FESTA SP&第 87 回感門之盟 感話集では、17 綴績了式に続いて、ISIS物語アワードの発表へとプログラムが進む。一体、どの文叢の誰の作品が受賞するのか?と、全叢衆の胸が高鳴る時間だ。物語アワードは複数あるのだから、誰にだって可能性はあるはず。ドラマーでもある小濱創師が、「心の中でドラムを鳴らしながら聞いてください」と、5つの作品賞と最優秀賞を順に発表した。受賞者へ贈られた本と一緒に紹介しよう。
◇◆窯変三譚◆◇
まずは、物語の素焼きから釉薬を「落語」・「ミステリー」・「幼ごころ」と着替えて窯変させた「窯変三譚」より、「窯変落語賞」・「窯変ミステリー賞」・「窯変幼な心賞」が発表された。
◆窯変落語賞
最首克也さん (ナ・バ・テア451度文叢)
『落語で資本論』立川談慶
◆窯変ミステリー賞
最首克也さん (ナ・バ・テア451度文叢)
『犯罪』フェルディナント・フォン・シーラッハ
◆窯変幼な心賞
最首克也さん (ナ・バ・テア451度文叢)
『エドウィン・マルハウス』スティーブン・ミルハウザー
「窯変三譚」三冠、三賞を独り占めした最首克也さんは贈呈本を三冊抱えて満面の笑みを湛える。
◇◆トリガー賞◆◇
次に発表されたのは、叢衆を翻弄させた偶然を必然にする物語の紡ぎ方を制したトリガー賞だ。
大貫武さん (リバーズパレス文叢)
『孤独の発明』ポール・オースター
◇◆編伝賞◆
1900年代初頭に生きた実在の人物を取り上げて、12000文字の大作を書き上げるという、物語講座最後のお題で選ばれたのはこの人だ。
名部惇さん (ナ・バ・テア451度文叢)
『舞踏会へ向かう三人の農夫』(上下)リチャード・パワーズ
◇◆冠綴賞◆◇
最後に物語講座の最優秀賞である冠綴賞が発表され、カバーの付いた綴墾巻が授与された。
名部惇さん (ナ・バ・テア451度文叢)
カバー付きの綴墾巻
名部惇さんは作品賞は編伝賞のみの受賞となったが、物語のそれぞれの型を学んだ上で、名部さんらしさを発揮してジャンルごとに書き分けることができていたと、全ての作品で高い講評を得ていたという。それが冠綴賞の受賞につながった。名部さんが、[破]の物語編集術で自分の中にあるものだけで描いたことを残念に思っていたので、物語講座では自分を捨てられたことがこの結果に繋がったのでは、とインタビューに答えると、小濱創師は、まさに物語講座で目指しているところだと嬉しそうに応じた。
名部さんの描いた編伝1910には、ISISフェスタのゲスト、近藤ようこさんからコメントも授けられるというまたとないご褒美も。取り上げた幻想・怪奇小説家の夢野久作を、幼名である杉山直樹という人物の育った時代と環境といった背景を紐解きつつ、感情にまで迫り丁寧に描いた作品となっている。学びになったし、その先も知りたくなった、と、今後の名部さんに期待を寄せた。
安田晶子
編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。