この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

52[破]突破式では、初めて破の師範、番匠のロールをつとめた4名へ、「玄々書(げんげんしょ)」が贈られた。松岡校長の書を使いつつ、穂積晴明方源がそれぞれの師範、番匠の「らしさ」を軸にデザインを施した趣のある書となっている。原田学匠から、メッセージも添えて手渡された書はこちら。
◆桂大介 師範 書「銀破」(ぎんぱ)
ひとつのところに留まらず、たくさんの私を実践している桂大介師範に贈られたのは「銀破」の書。ゴールドではなく、月の輝きの銀が桂師範らしいと校長も考えるのではないかという言葉も添えられた。やわらかい光がこれからも破の師範代たちを照らしてくれるだろう。
◆小林奈緒 師範 書「粹破」(すいは)
すっきりと艶やかな語り口を校長も誉めていたという小林奈緒師範には、その佇まいに重ねて「粹破」の書が贈られた。粹(いき)な破の師範として、これからも活躍していってくれることは間違いない。
◆吉田麻子 師範 書「観破」(かんぱ)
物語の素晴らしい書き手である吉田麻子師範。記憶のなかの印象的なシーンをしっかりと焼き付け、物語を書くときなどにそれを取り出して活かしている観察眼の高さから「観破」の書が贈られた。
◆白川雅敏 番匠 書「発句番」(ほっくばん)
プロの編集者でなんでもできる白川雅敏番匠には、連句の最初の五・七・五である発句(ほっく)のように、破のリーダーとして口火を切っていってもらいたいという思いも込めて「発句番」の書が贈られた。どこか可愛らしい字にも、白川番匠らしさが漂っている。
スタイリッシュに艶やかに、記憶を物語に込めて、口火を切っていく指導陣たち。これからの破講座も楽しみだ。
ビジュアルデザイン:穂積晴明
米田奈穂
編集的先達:穂村弘。滋賀県長浜出身で、伝統芸能を愛する大学図書館司書。教室名の「あやつり近江」は文楽と郷土からとられた。ワークショップの構成力に持ち前の論理構築力を発揮する。
教室名から始まる編集も楽しもう――54[守]教室名発表【84感門】
第84回感門之盟Day 2、教室名発表の場として感門之盟で最も盛り上がるプログラムのひとつ「冠界式」において、2024年10月開講の第54期[守]基本コースに登板する20名の師範代たちの教室名が発表された。師範代自身が […]
花伝所で2期以上指導陣をつとめた者に贈られるのが花伝選書である。今期は、花伝道場の宝刀である5名の花伝師範と4名の錬成師範、花伝所を統括し束ねる花目付、式目を更新し続ける花傳式部に贈られた。 ◆花傳式部 […]
41[花]放伝式 たくさんの花を引き継いで――花伝扇・玄々書授与【84感門】
花伝扇は初めて花伝所の錬成師範・師範をつとめた者に対し、松岡校長が贈ってきた扇である。これまで126通りの「花伝」の書が、松岡校長によって扇に書かれてきた。今後はこのたくさんの「花」と「伝」の文字を組合せ、扇を渡してい […]
それぞれのキャラクターを際立たせて――師範頌授与【84感門】
師範・番匠・評匠・遊筆・学匠を2期以上務めた者たちに贈られる「師範頌」(しはんしょう)は、感門之盟ごとにさまざまなグッズが編集されてきた。今回は番期同門祭のメイン・ヴィジュアルである熊手に飾られたアイテムを切り出し、師 […]
師範代のモチベーションも支える先達文庫――52[破]先達文庫授与【84感門】
たくさんの私を発揮しながら、この期を全力で走り抜けた師範代ひとりひとりに贈られる本が先達文庫だ。Day1の卒門式では、1冊の本が守の師範代に贈られたが、破の師範代には2冊の本が贈られる。学匠と学林局が相談し、それぞれの […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。