この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

たくさんの私を発揮しながら、この期を全力で走り抜けた師範代ひとりひとりに贈られる本が先達文庫だ。Day1の卒門式では、1冊の本が守の師範代に贈られたが、破の師範代には2冊の本が贈られる。学匠と学林局が相談し、それぞれの師範代の様子や数奇やこれからに合わせて選び、贈った20冊の本はこちら。
◆新坂彩子 師範代(イーディQ+教室)
『桜庭一樹と読む倉橋由美子』(倉橋由美子 (著)、桜庭 一樹 (編)/中公文庫)
『精選女性随筆集 倉橋由美子』(倉橋由美子 (著)、小池 真理子 (編)/文春文庫)
◆矢倉芳夫 師範代(全階モーマク教室)
『見ることの塩 上』(四方田犬彦/河出文庫)
『見ることの塩 下』(四方田犬彦/河出文庫)
◆石井晴美 師範代(変速背負投げ教室)
『音楽放浪記 日本之巻』(片山杜秀/ちくま文庫)
『音楽放浪記 世界之巻』(片山杜秀/ちくま文庫)
◆稲森久純 師範代(蝶か釣果教室)
『魚心あれば 釣りエッセイ傑作選』(開高健/河出文庫)
『魚の水はおいしい 食と酒エッセイ傑作選』(開高健/河出文庫)
◆登田信枝 師範代(ミネラル息吹教室)
『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』(松浦理英子、藤沢周、井辻朱美、阿部和重(訳)/河出文庫)
『にごりえ 現代語訳・樋口一葉』(伊藤比呂美、島田雅彦、多和田葉子 角田光代(訳)/河出文庫)
◆柳瀬浩之 師範代(魔弓マイスター教室)
『テクノコードの誕生』(ヴィレム・フルッサー/ちくま学芸文庫)
『メディアの文明史』(ハロルド・A・イニス/ちくま学芸文庫)
◆高田智英子 師範代(語部ミメーシス教室)
『他者の靴を履く』(ブレイディみかこ/文春文庫)
『ワイルドサイドをほっつき歩け』(ブレイディみかこ/ちくま文庫)
◆畑本浩伸 師範代(ダイモーン維摩教室)
『平家物語 1』(古川日出男(訳)/河出文庫)
『平家物語 2』(古川日出男(訳)/河出文庫)
◆渋谷菜穂子 師範代(ポンヌキ和華蘭教室)
『クアトロ・ラガッツィ 上』(若桑みどり/集英社文庫)
『クアトロ・ラガッツィ 下』(若桑みどり/集英社文庫)
◆束原俊哉 師範代(四一・一・二五教室)
『考える身体』(三浦雅士/河出文庫)
『『おくのほそ道』謎解きの旅』(安田登/ちくま文庫)
次期は物語講座の師範代を務める畑本浩伸師範代。教室名に含まれる「維摩」の仏教要素もミックスして贈られた本は古川日出夫の現代語訳による『平家物語』。素晴らしい語りぶりに肖って、物語講座での指南も進めて欲しいと、原田学匠からエールも込められた。
ビジュアルデザイン:穂積晴明
米田奈穂
編集的先達:穂村弘。滋賀県長浜出身で、伝統芸能を愛する大学図書館司書。教室名の「あやつり近江」は文楽と郷土からとられた。ワークショップの構成力に持ち前の論理構築力を発揮する。
教室名から始まる編集も楽しもう――54[守]教室名発表【84感門】
第84回感門之盟Day 2、教室名発表の場として感門之盟で最も盛り上がるプログラムのひとつ「冠界式」において、2024年10月開講の第54期[守]基本コースに登板する20名の師範代たちの教室名が発表された。師範代自身が […]
花伝所で2期以上指導陣をつとめた者に贈られるのが花伝選書である。今期は、花伝道場の宝刀である5名の花伝師範と4名の錬成師範、花伝所を統括し束ねる花目付、式目を更新し続ける花傳式部に贈られた。 ◆花傳式部 […]
41[花]放伝式 たくさんの花を引き継いで――花伝扇・玄々書授与【84感門】
花伝扇は初めて花伝所の錬成師範・師範をつとめた者に対し、松岡校長が贈ってきた扇である。これまで126通りの「花伝」の書が、松岡校長によって扇に書かれてきた。今後はこのたくさんの「花」と「伝」の文字を組合せ、扇を渡してい […]
それぞれのキャラクターを際立たせて――師範頌授与【84感門】
師範・番匠・評匠・遊筆・学匠を2期以上務めた者たちに贈られる「師範頌」(しはんしょう)は、感門之盟ごとにさまざまなグッズが編集されてきた。今回は番期同門祭のメイン・ヴィジュアルである熊手に飾られたアイテムを切り出し、師 […]
らしさを書にうつし、師範・番匠を寿ぐ――52[破]玄々書【84感門】
52[破]突破式では、初めて破の師範、番匠のロールをつとめた4名へ、「玄々書(げんげんしょ)」が贈られた。松岡校長の書を使いつつ、穂積晴明方源がそれぞれの師範、番匠の「らしさ」を軸にデザインを施した趣のある書となってい […]
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。