ねぎらいと期待を「一冊の本」に――52[守]先達文庫【83感門】

2024/03/16(土)23:00
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イシス編集学校には「本を贈り合う」文化が脈々と流れている。その源流となったのが、感門之盟で師範代に贈られる「先達文庫」だ。松岡正剛校長と木村久美子月匠が師範代ひとりひとりを思いながら選び抜いた、これぞという一冊。第83回感門之盟「EDIT TIDE」Day1、第52[守]基本コースで師範代をつとめた18名もこの特別な贈り物を手にした。

 

▲師範代のらしさと重ねながら本を紹介したのは相部礼子師範(中)と石黒好美師範(右)。当日まで極秘だった本を前に、山口喜芳師範代(左)は頬を緩めた。

 

 

◆瀬尾真喜子 師範代(即断ピアニッシモ教室)

 『グレン・グールド 孤独のアリア』(ミシェル・シュネデール/ちくま学芸文庫)

 

 

◆山田立郎 師範代(QEBBQ教室)

 『パタゴニア』(ブルース・チャトウィン/河出文庫)

 

 

◆水野亜矢 師範代(時々ゾーン教室)

 『明恵上人』(白洲正子/講談社文芸文庫)

 

 

◆田原一矢 師範代(千離万象教室)

 『私たちの想像力は資本主義を超えるか』(大澤真幸/角川ソフィア文庫)

 

 

◆新井隆子 師範代(北方ボタニカル教室)

 『エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦』(梨木香歩/新潮文庫)

 

 

◆山口喜芳 師範代(パズル蒸着教室)

 『建築家、走る』(隈研吾/新潮文庫)

 

 

◆石井晴美 師範代(変速シフト教室)

 『完全版 この地球を受け継ぐ者へ』(石川直樹/ちくま文庫)

 

 

◆矢倉芳夫 師範代(全階目ぐすり教室)

 『日本世間噺大系』(伊丹十三/新潮文庫)

 

 

◆登田信枝 師範代(変成ミネラル教室)

 『詞華美術館』(塚本邦雄/講談社文芸文庫)

 

 

◆飯田泰興 師範代(風月盆をどり教室)

 『月まで三キロ』(伊与原新/新潮文庫)

 

 

◆大和丈紘 師範代(ノート結索教室)

 『寺田寅彦随筆集 串田孫一編』(寺田寅彦/平凡社ライブラリー)

 

 

◆野崎和彦 師範代(はじき・おはじき教室)

 『本屋風情』(岡茂雄/角川ソフィア文庫)

 

 

◆内村放 師範代(カミ・カゲ・イノリ教室)

 『霊魂の民俗学 日本人の霊的世界』(宮田登/ちくま学芸文庫)

 

 

◆町田有理 師範代(校長ヴァージョン教室)

 『これはペンです』(円城塔/新潮文庫)

 

 

◆高田智英子 師範代(語部おめざめ教室)

 『山からの絵本』(辻まこと/ヤマケイ文庫)

 

 

◆大濱朋子 師範代(白墨ZPD教室)

 『線の冒険 デザインの事件簿』(松田行正/ちくま文庫)

 

 

◆大澤実紀 師範代(埒をあけます教室)

 『ときめくコケ図鑑』(田中美穂(文) 伊沢正名(写真)/山と渓谷社)

 

 

◆阿部紳作 師範代(マーボ梁山泊教室)

 『ほんとうの中国の話をしよう』(余華/河出文庫)

 

 

アイキャッチ・ビジュアルデザイン:穂積晴明

 

 

 

▲18冊の本に18通りのストーリーを添えて、本を手渡す鈴木康代学匠(左)。新井隆子師範代(右)の両手がふんわりと本を迎えた。

 

一冊との出会いが次なる潮流を生み出し、師範代たちを未知の島へと運んでいく。劇的な、よい旅を!

  • 福井千裕

    編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。