この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

コーナー名も進化する。新師範代が教室名を授かる「教室名発表」は、今期から「冠界式」と名付けられた。イシス編集学校の唯一無二の教室名は、松岡正剛の手によるもの。新師範代が千夜千冊数寄3夜を選び、教室名案を5つ提出。それを校長松岡正剛がリミックスしたものが、学衆の出会う教室名となる。
感門では、イシスに入門したものの一番の晴れ舞台を、ドラム浅羽登志也とキーボード梅澤光由による”the ISIS”なるユニットが一曲ごとに異なる演出で盛り上げる。
▲ときにピタゴラスイッチ、ときにベートーヴェンの運命、ときに唱歌「雨降りお月さん」まで。浅羽はドラムに飽き足らず、農ばさみでザリガニの真似をし、梅澤は弾きそうで弾かないという無音を表現とするなど、音楽の枠を超えた演劇的メディエーションに磨きがかかっている。
教室名を受け取った新師範代は「え?!」と絶句する者から、笑いだす者、そして「世間に喧嘩を売りにいくんでしょうか」と震える者まで。
2022年3月21日、第78回感門之盟でお披露目となった新教室名は19。松岡自身が「乾坤一擲」と心を込め、編集の粋を尽くした教室名を、松岡直筆のカードとともにご覧にいれよう。
◆宮坂由香師範代 / 感応おにぎり教室
◆古澤正三師範代 / 脱皮ザリガニ教室
◆小松原一樹師範代 / 八段プラモデル教室
◆森重実師範代 / 配線うなる教室
◆滝沢章師範代 / 切実ゲノム教室
◆三浦純子師範代 / ピッピ乱反射教室
◆安田晶子師範代 / キジトラ疾走教室
◆寺田悠人師範代 / アニマ臨風教室
◆野住智惠子師範代 / 男装いとをかし教室
◆総山健太師範代 / ライ8反攻教室
◆船山一樹師範代 / 三叉毘沙門教室
◆福井千裕師範代 / きざし旬然教室
◇ ◇ ◇
コーナー中盤では、浅羽・梅澤の”the ISIS”に、トイピアノを持ったイシスのマエストロ上杉公志が乱入。タブロイドに掲載された校長メッセージ「リミックスな三毛猫になりなさい」にちなんで、トリオで「ねこふんじゃった」を軽快にリミックス。
◇ ◇ ◇
◆古谷奈々師範代 / にじゆら発色教室
◆齋藤彬人師範代 / 赤いランドセル教室
◆大塚信子師範代 / 唐傘さしていく教室
◆西村宜久師範代 / ニシダ鳥肌教室
速修コース
◆辻井貴之師範代 / 渇望ネオモード教室
◆三津田恵子師範代 / かく書く然り教室
◆相部礼子師範代 / 忖度しないわ教室
新師範代を代表して、にじゆら発色教室師範代古谷奈々が挨拶に立った。古谷は、ロジカルシンキングに嫌気がさしてイシスに入門したという。当然というべきか、[守]も後半の用法3のとき、アナロジカルな思考を鍛えるお題で行き詰まる。そのとき師範代は古谷に言った。「意外性とは、スタバで『きつねうどん』と注文するようなもの」 これほどに意外でよいのかと古谷は目が開いた。
花伝所で身体が動かないときもそうだった。「師範はつねに、動くように指導してくれた」「そして、たった1ミリ動いたことでも、師範は評価してくれた」 自分自身よりも、自分の変化を読み取ってくれる指導陣が、イシスにはいるのだ。
古谷の語りに、ソファに身を沈めた校長松岡が大きく頷いていた。49[守]でも猛烈なにじみやゆらぎが生まれること間違いない。
文:松原朋子、梅澤奈央
写真:上杉公志、梅澤奈央
命名・カード作成:松岡正剛
■49期[守] 〆切迫る
・応募締め切り:2022年4月18日(月)
・開講期間:2022年4月25日(月) ~2022年8月21日(日)
お申し込みはこちらから
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。