Mシャツは熊手になった 師範感涙の「玄々書」「サイコロ」とは【78感門】

2022/03/20(日)18:27
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「僕にとってのダンスであり、歌であり、物語である」校長松岡正剛は、ある色紙を片手にそう語った。

イシス編集学校では、初めて師範や番匠などのロールをまっとうした者へ校長直筆の書が贈られる。今回から「玄々書」と名付けられた。松岡の俳号「玄月」に由来し、世界でふたつとない唯一無二の書だ。48[守]では初師範5名、初番匠2名に贈られた。

 

玄々書は、松岡がそれぞれの顔を思い浮かべて、書く。松岡が筆で書くことによって、生まれるスタイルがある。その筆跡をじっくりご覧いただきたい。 

 

 

◆阿曽祐子師範

「阿曽師範は、『縫う』という字。阿曽師範自身が猫になろうとしているようなおもしろい字にしてみました」

 

◆角山祥道師範

「角山師範は、なんでウチから書きたい気持ちが湧き出てくるのか。うずうずしているからだと思う」 カルマン渦(ボルテックス)を墨でかたちづくった「渦々(うずうず)」

 

◆嶋本昌子師範

「嶋本はへこたれないね。試みるたびに、もっと零れ落ちるものがあるといい。嶋本の身体から箔がこぼれ落ちるようなイメージを書いてみました」【身箔】の2文字。

 

◆森本康裕師範

松岡校長は、「言いそびれた」が大事と語る。言いそびれて悔やむのだけれど、自分がしそびれたけど、誰かがやっているということを見るのがうれしい、と。森本師範は13[離]を経て、さまざまな視点が入って自身が変わったのを体験したという。弓心一射教室の名から、【究】の【九】を【弓】に変えた一字。

 

◆中原洋子師範

ジャズシンガー中原師範は、「この人にはスポットライトがあたる」と校長は賞する。歌う中原師範に光が当たる様子を書であらわした。濃淡のついた【朗】ののひと文字。

 

 

◆若林牧子番匠

番匠をはじめて務めた者には、【番】の文字がアレンジして贈られる。

「彼女には襟が大事」ネイルアートに凝り、「ストールたくさん」なる教室名をもつ若林番匠には、末端がカラフルな【番襟】の言葉を。

 

◆白川雅敏番匠

「全部らくだ教室」という伝説の教室名をもつ白川らくだ番匠は、広大な砂漠を歩く【番駱】の書。

 

 

 

 

玄々書とは別の贈り物もある。それが「師範頌」である。二期以上師範・番匠・学匠を務めた者をねぎらう場だ。これまではTシャツならぬ「Mシャツ」、前期77感門では「Mグッズ」となり校長のイラスト入りのボトルが贈られた。

今回は、なんとサイコロ。林頭吉村堅樹とデザイナー穂積晴明による立案・制作だ。サイコロがあるなら、すごろくも必要ということで、イシスサイコロだけでなく、それを遊ぶ「骰子一擲編集術カード」とセットだ。

使い方は簡単。ふたつのサイコロを投げ、出た目の組み合わせをカードで参照するだけ。すると、校長松岡の編集機密術がお題として現れる。

贈呈にあたった局長佐々木千佳は「一日一擲。境をどんどん超えていく師範にこそ、ふさわしいプレゼント」とほころんだ。気になる学衆は、担当師範に遊ばせてもらおう。

 

◆梅澤光由師範、景山和浩師範、平野しのぶ師範、

 三津田恵子師範、三國紹恵師範、渡辺恒久師範

 石井梨香番匠

 鈴木康代学匠

▲歴戦の師範・番匠・学匠。左から、鈴木、石井、景山、平野、三津田、三國、梅澤。

 

▲設計思想から説明してみせたのは黒幕・林頭吉村堅樹。

 

また、これだけでは終わらない。

お祝いならば、個々人の名前が記されたものが必要だろうとの松岡の案により、それぞれの名前が記された「熊手」までが贈られた。毎期更新していく寿ぎのツールにも目が離せない。

 

▲ビニールバッグにはいったサイコロセットを手にし、熊手を受け取る師範陣。

 

タイトルスライド:穂積晴明

写真:上杉公志(本楼)、穂積晴明(サイコロ)

文:上杉公志、梅澤奈央

  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。