この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

20周年記念「Edit Japan2020」第74回感門之盟、午後の部は、44[破]突破式からはじまった。原田淳子[破]学匠が、44[破]を振り返りながら、お祝いのメッセージを贈る。
「今期は、コロナウィルスにより、世界がぴたっと止まったかのような中でのスタートでした。こんな一体何をしようかという時期に、皆さんは破を選ばれました。稽古へ必死に向かうことを経験されたことにより、大きなものを得たと思います。
私自身はイシス編集学校20年の歴史のなかの、後半10年しか残念ながら存じ上げないのですが、だからこそ、その前の10年についても知って皆さんにお伝えできればと思っています。長年[破]の学匠をなさった木村久美子月匠から学ぶとともに、この夏、『工作舎物語』を読みました。
そこには、いっそうハイチャージな松岡正剛校長の姿が書かれていました。
破では、松岡校長の仕事術を学びます。クロニクルから、歴史的現在にたって、物語を語る。そして、実際にプランニングする編集術を学んできました。これらの編集術を、仕事として活かしていくことが、破のミームでもあります。
そのミームとは、ハイチャージをつくって向かっていくこと。器に入るだけのものを用意するのではない。入りきらないものを用意したうえで小さな器に入れようとしていくことで、”創発”が起こっていく。そういったたくさんのものを惜しげもなく集めて、小さな場所に入れていく仕事ぶりの一端を、皆さんは稽古の中で得たのではないかと思います。ぜひこれからも、日常を稽古にしていくことにチャレンジしてほしいと思っています。おめでとうございました」
松岡校長の仕事術というミームを引き受けた10名の師範代たちに、師範から感門表が渡される。続いて、「先達文庫」の授与が行われた。走り抜けた破の師範代は、松岡正剛校長が一人ひとりのために自ら厳選した2冊を、手にすることができる。原田学匠から労いの言葉とともに手渡された。
◆武田英裕師範代 (来々雷三教室)
『ユービック』(フィリップ・K・ディック/ハヤカワ文庫SF)
『ジャック・イジドアの告白』(フィリップ・K・ディック/ハヤカワ文庫SF)
◆中山有加里師範代 (四歩八歩教室)
『ことばの教養』 (外山 滋比古/中公文庫)
『日本語の作法』 (外山 滋比古/新潮文庫)
◆神尾美由紀師範代 (一等ピノコロジー教室)
『宮沢賢治童話集』 (宮沢 賢治/ハルキ文庫)
『小川未明童話集』 (小川 未明/ハルキ文庫)
◆三津田恵子師範代 (半七アセット教室)
『声の力: 歌・語り・子ども』 (河合 隼雄, 阪田 寛夫, 谷川 俊太郎, 池田直樹/岩波現代文庫)
『物語とふしぎ』(河合 隼雄:著 河合 俊雄:編/岩波現代文庫)
◆吉居奈々師範代 (とりかえサンダル教室)
『生きて行く私』 (宇野 千代/角川文庫)
『青山二郎の話・小林秀雄の話』 (宇野 千代/中公文庫)
◆村井宏志師範代 (ムライ回遊教室)
『ペスト』 (カミュ/新潮文庫)
『ペスト』 (ダニエル・デフォー/中公文庫)
◆新井陽大師範代 (バニー注進蔵教室)
『目に見えないもの』 (湯川 秀樹/講談社学術文庫)
『旅人 ある物理学者の回想』 (湯川 秀樹/角川ソフィア文庫)
◆松永惠美子師範代 (赤耳ソシラ教室)
『草の花』 (幸田文/講談社文芸文庫)
『男』 (幸田 文/講談社文芸文庫)
◆蒔田俊介師範代 (ミドル永字教室)
『科学歳時記』 (寺田 寅彦/角川ソフィア文庫)
『銀座アルプス』 (寺田 寅彦/角川ソフィア文庫)
◆吉田麻子師範代 (薬研風穴教室)
『尾崎翠 集成』上下 (尾崎 翠:著、中野 翠:編/ちくま文庫)
突破された皆様、おめでとうございました。
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。