この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

知の最前線で活躍するプロフェッショナルたちは、『情報の歴史21』をどう読んでいるのか?人類誕生から人工知能まで、人間観をゆさぶった認知革命の歴史を『情歴21』と共に駆け抜ける!ゲストは鈴木寛さんです!
「『情報の歴史21』を読む」イベントシリーズの第16弾には、東京大学教授・慶應義塾大学特任教授であり、前文部科学大臣補佐官の鈴木寛(すずかん)さんをゲストにお迎えします。
鈴木寛さんは教育政策の第一線で活躍する一方で、イシス編集学校の松岡正剛校長とも長年にわたり親交を重ねてきました。
松岡校長は千夜千冊449夜ロバート・ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』で次のように書いています。
ぼくの友人に鈴木寛君がいる。灘・東大をへて通産省に入り、コンピュータ・ネットワーク時代の産業の将来に手を染め、途中で官僚をスピンアウトして慶応湘南の助教授になったとおもったら、今度は参議院に打って出て、民主党に入った。またそのうち何かをするのだろうとおもう。38歳である。
そのうち何かをするのだろうというのは、鈴木君がつねに「国」や「法」というものの在り方を考えていて、当然ながら今日の日本に満足していないからで、しかも自称するからには「日本国憲法をつくれる男」として、いまは「国家の限界」を考えぬきたいと言っているからである。
松岡校長と鈴木寛さんの二人の出会いは1995年にさかのぼります。
イシス編集学校の応用コース[破]では自分史のクロニクルを編集する稽古がありますが、鈴木寛さんは今回のイベントのために、松岡校長や編集工学との関わりを軸にした、下記の濃密なクロニクルを届けてくれました。
プロフィール
鈴木寛(すずきかん) ニックネーム すずかん
◉1986年東京大学法学部卒後 通産省入省
◉1993年から1995年の山口県庁に出向を機に、松下村塾に通い続け、若者の無限の可能性に感動。帰京後の95年秋に私塾「すずかんゼミ」を立上げ。
◉1995年春に通産省帰任し、IT政策・電子商取引政策を担当、帰京直後に代官山にあった編集工学研究所で松岡正剛先生に出会い、以来、約30年間師事。すずかんのメインフィールドである情報、教育、医療、スポーツ、アート、メディアなど様々な分野でご指南を賜る。編集工学研究所を拠点に活動されていた金子郁容慶應義塾大学教授とも出会う。
◉松岡正剛先生、金子郁容先生、編集工学研究所とは、「ボランタリー経済の誕生」の共同執筆、クロノスや2+1の開発、半塾、連志連衆会、ISIS編集学校の立上げ、鳩山由紀夫先生・船田一先生による鳩船新党の構想づくりなどに参画するとともに、すずかんゼミの学生が編集工学研究所に出入りさせていただき松岡正剛先生の謦咳に触れる。
◉1999年に松岡正剛先生からご紹介で懇意にさせていただいていた高橋潤二朗慶應義塾常任理事のお招きにより慶應義塾大学SFC准教授に就任。慶應義塾大学SFCでは、編集工学をベースにすずかんゼミの「ソーシャル・プロデューサー育成法」を作成。
◉2000年、松岡正剛先生からご縁をいただいたラグビー代表監督の平尾誠二氏とともに、SCIX(スポーツ・コミュニティ・インテリジェンス機構)を立上げ、日本の地域スポーツクラブの原型となる。現在、地域スポーツ・クラブは全国で1000か所を超える。
◉2000年に編集工学研究所で、金子郁容先生、当時の渋谷恭子社長とすずかんで執筆した「コミュニティ・スクール構想(岩波書店)」は、2004年に法制化され、2025年現在で全国2万校、学校ボランティア1000万人を超えるまでに発展。その功労を称し、制度化20周年に際し、金子郁容先生は文部科学大臣表彰。
◉2001年、鳩船新党の構想づくりでご縁をいただいた鳩山由紀夫先生のお声掛けにより参議院議員選挙に出馬・初当選、以後12年間参議院議員を務める、はじめての政見放送は松岡先生にご指南いただく。当選後は、赤坂にあった編集工学研究所の松岡正剛先生と鳩山由紀夫先生の連絡役を担い、戦後初の選挙による政権交代を実現。
◉2009年文部科学副大臣に就任、2期目の2011年3月に東日本大震災が発災、復興プランの監修を松岡正剛先生にお願いする。
◉2014年、東京大学公共政策大学院・慶應義塾大学SFC教授の日本初の国立・私立大学の正教授に同時就任。東京大学教養学部で立ち上げた駒場すずかんゼミナール「学藝饗宴」や灘高校東京合宿に参加の10代の若者にも、松岡正剛先生からご指導をいただく。
さらに、文部科学省参与、文部科学大臣補佐官(通算4期)に就任し、学習指導要領の改訂と大学入試改革を安西祐一郎元慶應義塾長と共に担当することとなり、松岡正剛先生にご指導を賜る。
◉2015年、編集工学研究所で出会った三井不動産北原副社長とのご縁もあり三井不動産とすずかん研究室は様々なプロジェクトを協働。そのうちの一つがLINKJ(ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン) LINKJは、日本初の生命科学系のベンチャーエコシステムで、現在、会員が1000社に迫るまでに成長。
◉「ボランタリー経済の誕生」のコンセプトを実装すべく、西会津町で未来型「結」を立上げ、文化庁表彰される。
◉2025年春、松岡正剛先生の編集工学・編集術を次世代に教授すべく、いずれも松岡先生に大変お世話になった日本財団、角川ドワンゴ学園とすずかんの三者が、協働して構想・準備したZEN大学(収容定員14000人、すずかんは同大学の評議会議長)が開学。安藤社長が編集工学を学生たちに指導を開始。
◉著作:『「卒近代」宣言』(エッセンシャル出版社、2025)、『熟議のススメ』(講談社、2013)、『コミュニティ・スクール構想 ― 学校を変革するために』(岩波書店、2000)、『中央省庁の政策形成過程 ― 日本官僚制の解剖』(中央大学出版部、1999)など多数。
鈴木寛さんは、東京大学での授業において『情報の歴史21』を実際に教材として活用しているそうです。そこで本イベントでは、
・なぜ『情歴』を教育現場で取り上げているのか
・学生たちはこの本をどう受け止めているのか
・そして、これからの教育において『情歴21』が果たしうる役割とは何か
といった視点から、『情歴21』の新たな可能性を掘り下げていきます。
イベントタイトルは「東大生も学んだこれからの時代を読み通す方法」。
「教える」現場で『情歴』がどう使われているのか知る、またとない機会です。
ISIS FESTA SP『情報の歴史21』を読む 第16弾鈴木寛編
東大生も学んだこれからの時代を読み通す方法
■日時:2025年6月20日(金)19:30-22:00
■参加費:リアル参加 4,400円(税込)
オンライン参加 3,300円(税込)
■会場:リアル参加:本楼(世田谷区豪徳寺)
オンライン参加:お申し込みの方にzoomURLをご案内します
*リアル参加もしくはオンライン参加のどちらかをご選択いただけます
■定員:リアル参加につきましては先着20名となります
■対象:どなたでもご参加いただけます
■ゲスト講師:鈴木寛さん(東京大学教授、慶応義塾大学特任教授、前文部科学大臣補佐官)
■参加特典:お申込者限定のアーカイブ動画あり(視聴期間:1カ月程度)
■申込締切日:2025年6月19日(木)12:00まで
■お問い合わせ:front_es@eel.co.jp
*『情報の歴史21』もしくは『情報の歴史21 増補版』(書籍版 or PDF版)をお持ちの方はご持参ください
▼お申し込みはこちらから
https://shop.eel.co.jp/products/es_tour_250620
*多読アレゴリア2025夏(6月2日開始)に参加される皆さまへ
当イベントは多読アレゴリア2025夏の無料オンライン視聴特典
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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2025-06-10
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建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。