この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

多読スペシャル第6弾が「杉浦康平を読む」に決まった。
杉浦康平さんといえば、若かりし松岡正剛校長がぜひとも「入門したい」「師にしたい」と切望した人物だ。千夜千冊981夜『かたち誕生』では次のように語っている。
杉浦康平は…ぼくにとっては極上の師にあたる。とっておきの人で、途方もなくかけがえのない人である。
今回の多読スペシャルは、昨年8月に松岡校長が亡くなってから、最初の開催になる。また、プログラム受講期間の終了直後には校長の一周忌を迎える。
そこでできるなら、校長を偲ぶとともに、校長の方法をあらためて深く広く探求する企画を組み立てたい。そう考えたとき、「次はこの人しかいない」となった。
やっぱり、杉浦康平さんだ。なんといっても、校長にとって「極上の師」。そして「とっておきの人で、途方もなくかけがえのない人である」。
杉浦康平『かたち誕生』を含む「万物照応劇場」シリーズ 全5巻
杉浦さんと松岡校長の特別な関係を背景にして、今ここにイシス編集学校にしかできない杉浦康平講座が爆誕しつつある。もちろん、テーマはデザインに限らない。アジア、知覚、仏教、宇宙、文字、かたち、書物、身体…あらゆるジャンルを横断する。
まさに杉浦さんは…デザインのすべての可能性を変えてしまった人だった。こんな人は二度と出てこないにちがいない。
杉浦さん…その人がデザイン論の述語であり、杉浦さん…その人が新たな文化人類学の対象になっていいほどなのだ。
耳を澄ます人、目を凝らす人、手を尽くす人。それが杉浦康平…だった。
ちなみに2011年に武蔵野美術大学で開催された「杉浦康平・脈動する本:デザインの手法と哲学展」では《静寂なる脈動》《ゆらぎ、うつろう》《声を放つ文字》《脈動する本》《ノイズから生まれる》《本の地層学》《一即二即多即一》《アジアンデザイン》をヘッドラインに掲げた(なお、展覧会の図録に校長は「わが宿は四角な影を窓の月——杉浦康平に贈るBASHOたち」というエッセイを寄稿)。
[連塾]ブックパーティスパイラル巻② 本が語り、人が集う。 2011年5月28日
編集学校は「杉浦康平を読む」ための独自のアーカイヴも充実している。いまや伝説となっている雑誌『遊』、『全宇宙誌』、『ヴィジュアル・コミュニケーション』など杉浦康平×松岡正剛(以下「”SM”」)のコラボレーション作品はもちろん、二人の対談や講義の貴重映像など、それらの教材を入手するだけでも受講の価値があると言っていいほどだ。
それだけではない。『遊』時代から”SM”を凝視し続けてきた木村久美子月匠がプログラム・ディレクターを務めている。また、”SM”デザイン学の系譜の末裔たる穂積晴明が講座開発の番頭役を買ってでた。大音冊匠ひきいる冊師チーム(浅羽登志也・野嶋真帆・吉野陽子・渡曾眞澄)も”SM”研究会を立ち上げて、鉄壁の布陣をしく。
プログラムの詳細はエディストにておって続報。先着30名、定員になり次第、締切です。
上:objet magazine『遊』 創刊号/8号「叛文学非文学」/9号・10号「存在と精神の系譜」
下:objet magazine『遊』 1001「相似律」/1002「呼吸・歌謡曲」/1003「店の問題・幻想人工都市」/1004「タオの世界・北斗七星」
Info 多読スペシャルコース 第6回「杉浦康平を読む」
【受講期間】2025年6月28日(土)~8月10日(日)<6週間>
「オープニング・セッション」6/28(土)
*オンライン参加可
【受講資格】イシス編集学校 [破]応用コース修了者
【定員】30名 *定員になり次第、締め切りになります。
【受講料】99,000円(税込)
【お申込み】https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_sp2025
【続報】多読スペシャル第6弾「杉浦康平を読む」3つの”チラ見せ”
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。