この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

多読ジムが出版社とコラボする「”版元読み”エディストチャレンジ」の第二弾の詳細が決定しました。コラボ出版社は「セイゴオ尽くし」を掲げる来シーズン「多読ジムSeason11・夏」にふさわしく、イシス編集学校・松岡正剛校長の古巣「工作舎」、気になるトレーニングブックは三冊筋のテーマ「虫愛づる」に寄せて、工作舎の田辺澄江さんが「推しの三冊」を選書してくれました。
デザイン:穂積晴明
トレーニングブックを紹介する前に、ここで簡単に「エディストチャレンジ」の企画内容をおさらいしておきましょう。
エディストチャレンジは、三冊の本をつないでエッセイを書く「三冊筋プレス」の”オプションお題”という位置づけで出題されます。多読ジム受講者なら誰でも参加することができ、参加者は三冊筋プレスの三冊のうち一冊以上をトレーニングブックから選ぶことが参加条件となります。
エディストチャレンジに出品されたエッセイの中で、佳作として選ばれた作品は、イシス編集学校のウェブメディア「遊刊エディスト」に掲載されるとともに、出版社のSNS等でも取り上げられるなどプチアワードがついています。
出版社コラボ第一弾「多読ジム×太田出版」(Season10・春」)のアイキャッチ。
デザイン:穂積晴明
では、今回のトレーニングブックのご紹介です。田辺さんが寄稿してくださった解説文とともにご覧ください。
本体3800円+税
B5判変型/上製 148頁 2021年6月刊
◉モーリス.メーテルリンク『ガラス蜘蛛』高尾歩=訳 杉本秀太郎、宮下直=解説
定価 本体1800円+税
四六判/上製 144頁 2008年7月刊
「虫愛づる」にはもってこいのムシ、虫、蟲、です!
「虫のひらき」に「虫奇譚集」、宮崎駿も偏愛する「ガラス蜘蛛」も加わって、”セイゴオ尽くし”ならぬ、まさに”虫尽くし”の三冊になっています。
三冊目のメーテルリンクは運命哲学の思想家として千夜千冊でも取り上げられています。代将もメーテルリンクフリークを自称し、三冊筋プレス「青の三冊」(season09・冬)で『青い鳥』や『花の知恵』について書きました。
ちなみに工作舎からは『ガラス蜘蛛』『花の知恵』のほか、メーテルリンクの博物文学と冠して『蜜蜂の生活』『蟻の生活』『白蟻の生活』の昆虫三部作も刊行されています。こちらもどうぞ読み逃しなく。
千夜千冊の愛読者は田辺澄江さんのこともよくご存知のことでしょう。ロバート・キャパ『ちょっとピンぼけ』(148夜)、野尻抱影『日本の星』(348夜)、宮田登『ヒメの民俗学』(537夜)、実野恒久『乾電池あそび』(619夜)、ロレンス・ダレル『アレキサンドリア四重奏』(745夜)、ラスロー・モホリ=ナギ『絵画・写真・映画』(1217夜)、吉福伸逸『世界の中にありながら世界に属さない』(1680夜)、ゴットフリート・ベーム『図像の哲学』(1784夜)など数々の千夜にそのお名前が登場し、そこで松岡校長は田辺さんとの出会いや思い出をなつかしそうに綴っています。
1974年当時、松岡校長が桑沢デザイン研究所で生徒に教えている様子。
それによると、校長は28歳のとき、桑沢デザイン研究所の写真科の講師を任され、そのとき初めて人前で何かを教えるということになったのですが、そのセンセイ初挑戦の授業に写真科の田辺さん、グラフィックデザイン科の木村久美子月匠や戸田ツトムさんが出席していて、そこでの出会いをきっかけにして、田辺さん含め桑沢の学生たちが工作舎で編集やデザインの仕事をするようになったのだそうです。校長は田辺さんたちが「『遊』の最初の黄金期ともいうべきをつくってくれた」とも記しています。
雑誌「遊」の巻末広告でモデルをつとめる田辺澄江さん(左)と木村久美子月匠(右)。
それにしても、桑沢デザイン研究所の写真科ではいったいどんな授業が繰り広げられたのでしょうか。また、その様子は学生たちの目にはどんなふうに映ったのか。伝説の授業の真相はいずれ田辺さんや木村月匠に取材を申し込みたいと目論んでおります。その際は、田辺さんがいかにして編集者を志すことになり、当時の雑誌「遊」そして工作舎の編集者とはどんな仕事だったのかについても明らかになることでしょう…。
本づくりには編集者、エディターが不可欠です。にもかかわらず、編集者の顔やその姿、プロフィールや仕事のルル三条(ルール・ロール・ツール)はなかなかオモテにあらわれてはきません。謎に包まれています。雲隠れしています。この出版コラボ企画では「遊刊エディスト」を通じて、そんな「編集者の謎」にも迫っていきたいと考えています。ムッシッシ!
Info
◉多読ジム season11・夏 三冊筋プレス「”版元コラボ”エディストチャレンジ」◉
∈コラボ出版社
工作舎
∈トレーニングブック
◇桃山鈴子作品集『わたしはイモムシ』
◇福井栄一『蟲虫双紙』(むしむしそうし)――ちいさなイノチのファンタジア――』
◇モーリス.メーテルリンク『ガラス蜘蛛』高尾歩=訳 杉本秀太郎、宮下直=解説
∈参加資格
∈DESIGN the eye-catching image
穂積晴明
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。