[物語講座]師脚座で明かされた!情報を動かす3つの骨法

2022/09/04(日)18:00 img
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物語講座師脚座

 偶然を必然にする。これが編集の基本である。
 情報を動的にする。これが編集の骨法である。

 

イシス編集学校の数ある講座の中でも、この2つが実感でき、方法として体得できるのは「物語講座」しかない。昨年からプログラムが大きく改編され、さらにハイパー・プログラムになった。講座開講に先立って9月4日に開催された師脚座は、守破でいえば伝習座。師範代、師範による学びの場である。師範によるプログラムレクチャーと物語講座で手渡したい編集の核が確認された。その核は以下の3ポイント。受講を迷っている方はぜひ参考にされたい。

 

1.「トリガークエスト」で偶然を必然に
「トリガークエスト」という言葉から何を連想するだろう。クエストをトリガーにするという名の通り、次々にクエストが降ってくる。そのクエストをクリアすると、師範から一人ひとりに違うクエストが届けられる。そう、クエストをクリアしながら物語を仕上げていく道筋がそれぞれで違うのだ。自分が書きたいと考えていた物語が、偶然のクエストによって突き崩される。否応なく偶然を必然に物語を編集せざるを得なくなる。この流れに身を任せることで、編集的自由を体感する醍醐味を感じられるはずだ。

 

2.「窯変三譚」に方法の手すり
内容に没頭すると方法を忘れる。[守]で学んだ型はどこにいったのか。わかっているがうまく使えない。そこで物語編集し、磨き上げていく上で抑えておきたい方法の手すりが最初のプログラム「窯変三譚」で用意されている。「窯変三譚」とは、新聞記事を素材に素になる物語を用意し、それを落語・ミステリー・幼なごころに1週間に1編ずつ書き分けるというものだ。方法意識に覚醒しながら、ジェットコースターのような編集加速が体験できる。

 

3.「文叢の物語」「編伝1910」で読んで書く
物語講座は物語を書くだけの講座ではない。物語を「読む力」も高めることができる。最後のプログラム「編伝1910」では、『情報の歴史21』の1910年前後20年の歴史を読み解き、さらにピックアップしたテーマや人物を読み込む。その「読み」の用意が「書く」ためのプランニング編集の与件になっていくわけだ。赤羽卓美綴師が仕立てた「1910人物マップ」も参考資料として提供される。

 

「読み」は講座の前から用意されている。物語講座では教室が文叢となる。それぞれに文叢名がある。その文叢名は、二つの物語の一種合成で松岡正剛校長がネーミングしたものだ。この文叢名にちなんだお題も待ち構えている。
ではここで、師脚座で明かされた文叢名を、今回の指導陣とともにエディスト読者に先行紹介しよう。

 

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 芳一ドン・キホーテ文叢
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ヤドカリ軍団のエース:網口渓太 師範代
 & 永遠の初心少女  福澤美穂子 師範

 『耳なし芳一』小泉八雲/光文社古典新訳文庫『怪談』
 『ドン・キホーテ』ミゲル・デ・セルバンテス/岩波少年文庫

 

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 天守よだか文叢
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編伝賞受賞のチャーミングレディ 後藤泉 師範代
 & 戻ってきた児童文学の編集リーダー 大原慈省 師範

 『天守物語』泉鏡花/岩波文庫『夜叉ケ池・天守物語』
 『よだかの星』宮沢賢治/岩崎書店『宮沢賢治のおはなし(8)よだかの星』ほか

 

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 はてしない裏庭文叢
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◆多読マラソンのパワフルマザー 小林奈緒 師範代
 & ブランディング伝説と編集剛腕  裏谷恵子 師範

 『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ/岩波書店または岩波少年文庫(上下)
 『裏庭』梨木果歩/新潮文庫

 

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 ナウシカ黒蜥蜴文叢
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速修から物語へスピードクイーン 三津田恵子 師範代
 & ベテラン辣腕編集職人   小路千広 師範

 『風の谷のナウシカ』宮崎駿/徳間書店『風の谷のナウシカ 』全7巻
 『黒蜥蜴』江戸川乱歩/春陽堂書店・江戸川乱歩文庫

 

これらの多種多彩かつフレッシュな指導陣を束ねるのが、物語講座立ち上げからのリーダー・赤羽卓美綴師と講座を束ねる3期目の小濱有紀子創師、そして松岡正剛校長と半世紀を共にする木村久美子月匠だ。

 

物語講座は4ヶ月で5編の物語を書き上げる。世界知、方法知を総動員し、情報が自ずから動き出す物語構造を仮設するプロセスだ。世界読書奥義伝[離]や師範代、師範を経験した人こそ受講されたい。もちろん編集腕自慢をしたい者も大歓迎だ。あの江戸文化研究家の田中優子氏も再受講を心待ちにしているらしい。

 

まもなく開講の物語講座15綴、お尻がむずむず、体がうずうずしてきたら、いますぐ受講申し込みをどうぞ。


Info
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[遊]技法研鑽コース 「物語講座」第15綴
https://es.isis.ne.jp/course/yu-narrative

■期間   :2022年10月10日(月)~2023年2月5日(日)
       ライブ稽古「蒐譚場」12月4日(日)

                 編集工学研究所(本楼)
■資格   :[破]応用コース修了者(突破)以上
■プログラム:窯変三譚/トリガー・クエスト/編伝1910
■お申込み :https://shop.eel.co.jp/products/detail/422
       ※再受講割引あり。
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  • 吉村堅樹

    僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。