この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「言葉の編集があって、声や音曲の編集があって、身体が編集される」。
世阿弥にとっては、どんな語句も連想をつむぎ出しやすいように言語を編集することが重要であった。
今回のイシス20周年記念輪読座は、満を持しての「世阿弥」である。イシス編集学校には「ISIS花伝所」という師範代養成講座がある。「稽古条々」「時分の花」「離見の見」「却来」「是風が非風を包む」「一調二機三声」。世阿弥の言葉はISIS花伝所のプログラムにも、花伝所を経た師範代の構えにもいきている。世阿弥は、6月に20周年を迎えるイシスにふさわしいテーマなのだ。
紡いだ言葉から手振り・身振りがおこる。イメージ連鎖の編集、それを世阿弥は「懸り」という。これが身体を編集していく。そのような言葉の編集が「謡(うたい)」になっていく。
輪読師のバジラ高橋曰く、「世阿弥はヴィトゲンシュタインなんて、とっくに超えている」。世阿弥は劇作や言語編集だけがすごいわけではない。観世座の棟梁であり、足利義満・義持・義教の三将軍の大変動する80余年間を生き抜き、思索を広げ、向上させ続けていた。世阿弥の芸論からは、現代に生きる我々にとっても独自な経営論、組織論、人生論、社会変動に対する自立的精神論を学ぶことができる。
今回の輪読座では、1ヶ月目に『風姿花伝』を読み切り、『花鏡』を2ヶ月に分けて読み切り、『申楽談義』の要所を2ヶ月で輪読する。最終の6ヶ月目には佐渡に流された世阿弥が、佐渡に至る旅を7編の「謡(うたい)」(曲舞:くせまい=久世舞の歌詞)に編集したものを輪読する予定になっている。
なお、今回の輪読座参加者には、バジラ高橋による『風姿花伝』『花鏡』『申楽談義』『金島書』の内容の書き下ろし概説、世阿弥の伝書の内容に合わせて、世阿弥人生81年の物語を合わせた30ページ以上にわたる「バジラ世阿弥解読序説」をPDF資料が提供される予定になっている。
イシス20周年記念輪読座「世阿弥を読む」は現在参加申し込みを受け付け中。コロナで外出自粛の中でもネットで受講できるサテライト輪読座も用意されている。第一回は4月26日にスタートする。
詳細はこちらから
吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
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2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。