この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

端午の節句を目前に、輪読座に桃の香りが立ち上る。
輪読座がとうとう幸田露伴を取り上げる。
前期の輪読座「三浦梅園『玄語』を読む」を開催中に、輪読師バジラ高橋が次はこれしかない!と選んだ人物だ。
幸田露伴は、松岡正剛校長に「露伴を読まなくて何が日本文学だ」と言わしめた日本文学史に名を残す文豪である。岩波書店の創設者小林勇を魅了したことも千夜千冊に取り上げられている。
明治の文豪でも随一の知識をもつ露伴だが、やや漢文交じりの文体のためか読書力がある人にも挫折されてしまう作家でもある。そこで輪読座では、幸田露伴の数ある文章から、バジラ高橋が厳選して輪読しようというわけだ。
露伴の深さ、絶妙さを支えるものに道教がある。
露伴は道教の根本に広がる万物照応の視点で言語と文章に向かった。物事を外から見るのではなく、めくるめく対応世界の中に入り言語化し、文章にしているのだ。
道教が生まれた中国は石室の文化を持つ。露伴は、石室の中の言語に入りこみ、桃とナツメの目で言葉を紡いだ。
もちろん露伴は中国世界を見ていただけではない。淡島寒月から手渡された「日本人とは何か」という問いも抱えながら、西欧化による大国を目指す大日本帝国の文学、学術に対し、一貫して「編集としての日本」を考えていたのだ。
グローバル化がさらに幅をきかせている時代に、私たちは「日本人とは何か」をあらためて問う時期に来ているだろう。
言語といった峨峨たるものの中に、桃とナツメの時間を織り込んで書き続けた露伴。
失われし日本を見つめる視点でも、余人をもって代えがたい露伴。
今まで日本文学史でも捉えていない新たな露伴を、輪読師バジラ高橋と読み解いていく輪読座「幸田露伴を読む」は開講直前だ。
予習や予備知識は一切不要。桃と日本茶を手に、幸田露伴を輪読座で味わい尽くしていただきたい。
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日本哲学シリーズ 輪読座「幸田露伴を読む」
日時:全日程 13:00〜18:00
2023年4月30日(日)
2023年5月28日(日)
2023年6月25日(日)
2023年7月30日(日)
2023年8月27日(日)
2023年9月24日(日)
受講資格:どなたでもお申込いただけます(イシス編集学校講座未受講の方もご参加可能です)
参加方法:オンライン(Zoom)
※記録映像を期間中いつでもご視聴いただけます。
価格:サテライト講座:6回分 33,000円(税込)
詳細・申込:こちらをご覧ください(イシス編集学校のウェブサイトへリンクします)
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衣笠純子
編集的先達:モーリス・ラヴェル。劇団四季元団員で何を歌ってもミュージカルになる特技の持ち主。折れない編集メンタルと無尽蔵の編集体力、編集工学への使命感の三位一体を備える。オリエンタルな魅力で、なぜかイタリア人に愛される、らしい。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。