梅園流!学びをほぐす方法【輪読座第二講】

2022/11/27(日)19:13
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「人間は、マインドコントロールを流布することで共同体を作り、浸透させることで文化を創り、徹底させることで文明を発展させる。」

輪読師であるバジラ高橋は「マインドコントロール」を「教育」とも言い換えながら語気を強めた。

 

人間の考え方は、時代に現れた常識を基軸に成り立っている。しかし当たり前を鵜呑みにしてしまっては、新しい価値を作ることができない。既存の枠組みによる洗脳にとらわれてしまうからだ。

 

アンラーニングの方法

三浦梅園はこれまでのどの分野にもあてはまらない学問を創出した。条理学である。学びの核としたのが、「知っていることと知らないことを行ったり来たりする」ということだ。

「知っていることで世界を構築してはいけない。それと対峙する未だ知らざることをもつ必要がある。そうすると新しい理論や価値を創造することができる。」

 

三浦梅園が描いた玄語図の解説 (バジラ高橋による図象資料より)

 

梅園は何かを一つに合成する「合」、合わさったものを分離する「分」の両方を重視した。分岐したもの同士は一対の関係になり、それを「対峙」と呼んだ。対峙には大切な条件があり、それが既知と未知でつがいをつくるということだ。

「選んだものだけで思考を進めてはいけない。選ばなかったものを対にしながら、世界観を生み出していく必要がある。」

自分が知らない未知な何かを既知の片割れにもってくる。対とは相反する物事ではなく、一つの物事の二つの側面である。だから、対同した既知と未知を「反観合一」に向かうことができるのだ。

 

玄語論と編集

編集は一度学んだことを解きほぐし、世界と自分を柔らかく結び直す方法である。今までの固定的な思考のフレームをアンラーニング(学びほぐし)し、新たな価値の創り出すことへ向かうのである。

 

三浦梅園は18世紀後半に『玄語論』を記し、学びほぐすことの重要性を説いた。世界の再構築に向かったのだ。では、現代はどのような玄語論をつくらなくてはいけないのか。先の見通しが立たない時代だからこそ、三浦梅園を読むべきなのだ。

 

玄語図に見られる三つの基本構成。 (バジラ高橋による図象資料より)

基本構成を多様に組み合わせることで玄語図となる。 (バジラ高橋による図象資料より)

 

 

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・【受付開始】10/30〜輪読座「三浦梅園『玄語』を読む」情報公開&申込受付中!

学徒よ、梅園を知れ【輪読座第1輪

 

【今後の開催予定】

・2022年12月25日(日)
・2023年1月29日(日)
・2023年2月26日(日)
・2023年3月26日(日)

 ※毎月最終日曜日に開催

 ※全日程:13:00〜18:00

 

【受講資格】どなたでもお申込いただけます(イシス編集学校講座未受講の方もご参加可能です)

 

【参加方法】オンライン(Zoom)

 ※当日ご参加いただけない方向けに、開催後に講義動画を共有いたします。

 

日本哲学シリーズ 輪読座「三浦梅園『玄語』を読む」

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  • 山内貴暉

    編集的先達:佐藤信夫。2000年生まれ、立教大学在学中のヤドカリ軍団の末っ子。破では『フラジャイル』を知文し、物語ではアリストテレス大賞を受賞。校長・松岡正剛に憧れるあまり、最近は慣れない喫煙を始めた。感門団、輪読小僧でも活躍中。次代のイシスを背負って立つべく、編集道をまっしぐらに歩み続ける。

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コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。