つげ義春 マンガのカンヌで特別栄誉賞

2020/02/11(火)17:20
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 漫画家・つげ義春が第47回アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を受賞した。おん年82歳だ。アングレームといえば、マンガのカンヌと言われており、谷口ジロー、辰巳ヨシヒロを筆頭に鳥山明、大友克洋、つげ義春の師匠である水木しげるも『のんのんばあとオレ』で最優秀作品賞(2007年)、『総員玉砕せよ!』で遺産賞(2009年)を受賞している。

 

 

 水木しげるはつげ義春のことをこう評した。「つげさんはスケベで怠け者でしたね。でも品物はいいんです」。このことは千夜千冊0921夜『ねじ式・紅い花』でも取り上げられているので、ぜひあらためて読み直してほしい。水木しげるは「李さん一家」をとくに評価しているようだ。在日朝鮮人一家をめぐる物語である。

 

 

 捨てたはずのわたしが、今夜わたしをたずねてくるのです。これは石井輝男監督の映画『ゲンセンカン主人』の宣伝コピー。佐野史郎主演で、『李さん一家』『ゲンセンカン主人』『紅い花』『池袋百点会』からなるオムニバスムービーである。

 

 

 つげ義春は千夜千冊で取り上げられているだけでなく、イシスの面々が選書した近大アカデミックシアター2Fのマンガと新書と文庫だけの図書空間DONDEN(どんでん)のキーマンになっている。DONDENが”読断と編見”で選りすぐった漫画家50人、「LEGEND50」には手塚治虫や赤塚不二夫らとともに、つげ義春の名が連なっている。

 

 

 

 いちファンとしては、今回のアングレーム受賞を機に、つげマンガがもっともっと日本で読まれることを期待したい。イシスには堀江純一がいる。堀江は、マンガのスコアをテーマにした記事の準備を”ダンドリ・ダントツ”で進めている。そのうちふいに、堀江純一=つげ義春がエディストの片隅でひょっこりはんすることだろう。

 

 

  • 金 宗 代 QUIM JONG DAE

    編集的先達:宮崎滔天
    最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
    photo: yukari goto

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。