この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

井上麻矢さんが、53[守]の舞台に出演する。そんな話を聞きつけ、ZOOMへと向かった。イシス編集学校の花形演題『編集宣言』が7月14日に本楼で開催される。田中優子さん、大澤真幸さん、武邑光裕さんに続く、4人目の登壇者は劇団こまつ座代表取締役社長の井上麻矢さんだ。12[守]胸中サンズイ教室の学衆であり、師範代とともに型を磨き、「編集学校では言葉を考える力を学んだ」と振り返る。こまつ座代表を継いでからはイシスで学んだ型とともに走り続けている。5月24日、学林局のメンバー、[守]の師範陣が麻矢さんとの打ち合わせに臨んだ。
麻矢さんは私たちの前に顔を出し、特別講義の構想を滑らかな口調で話し出す。講義はこまつ座でプロデュースした映像を鑑賞しながら進んでいくようだ。これまで手掛けてきた企画では、「編集学校で学んだことを具現化してきた」と、守の型が身体に染み入っている語りぶりである。さらに「型を覚えなければ、型を壊せない」と、父井上ひさしの作品を徹底的に学び、井上ひさしの型を壊してきたと語る麻矢さんならではの演劇的な特別お題がプレゼントされるという。お題に臨めば、編集の型・実践術の真髄に迫れるはずだ。終始、麻矢さんが放つ、優しい眼差し・耳を傾ける力・語る勇気に胸が騒ぐのを感じた。そして打ち合わせ開始から僅か40分後、風のように芝居の世界に帰っていった。
短冊揺らめく七夕の季節、劇団こまつ座と53[守]で化学反応が起こる。麻矢さんの仕事芝居術を学び、ちょっと粋な「たくさんのわたし」の物語が創発する、そんな情熱の舞台が約束された。
文/紀平尚子(53[守]師範)
特別講義の概要は以下の通り。
●イシス編集学校第53期[守]特別講義「井上麻矢の編集宣言」
●日時:2024年7月14日(日)14:00~17:00
●ご参加方法:zoom開催
●ご参加費:3,500円(税別)
※53[守]受講生は受講料に含まれています。
●申込先:https://shop.eel.co.jp/products/detail/717
※53[守]受講生は教室からお申し込みください。
●お問合せ先:es_event@eel.co.jp
どなたでも受講できます。ふるってご参加ください。たくさんのお申し込みをお待ちしています。
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2025-06-10
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2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。