この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

2024年8月25日。第53期[守]基本コースは卒門日を迎えた。学匠・鈴木康代は、各教室を見守りながら、松岡校長の面影を追っていた。康代学匠は、松岡校長の編集的世界観のミームを託されてこの春発足したISIS_commissionのメンバーの一人でもある。
学匠として、53[守]の変わることと変わらないことを意識してきた。[守]の期中の勉強会伝習座ではこまつ座座長井上麻矢さんを迎えて特別講義「編集宣言」の冒険を語っていただいた。
守で得た編集の方法の先にあるものを学衆に届けたい康代学匠の想いがにじみでてくる。
そして、迎えた第84回感門之盟「25周年番期同門祭」DAY 1、第53期[守]の卒門式のはじまりに康代学匠はメッセージを語る。
「ことばをはじめて覚えたころのような幼な心を校長は大切にしていました。場と人と事と体験が一緒になっていくと同時にお題の懐かしさを思いだす先に用法はあるのです」
康代学匠は柔らかく、そして的確に守の意味を解く。
「みなさんは、守の38のお題を通して校長の思考のプロセスを体験したと思ってほしい」
「簡単に書ける回答は捨てていい。心の奥にある秘密基地やさみしかったことが表沙汰になることで体験にあらわれるのです」
校長の旅立ちが届いた格別の想いが重なる万感の想いを秘めつつ、
康代学匠は軽やかに言の葉を紡いでいく。
「校長は存在としてここにいます。みなさんのなかにその断片はあるはずです。ここからさらに校長の在を引き継いでいきましょう」
明日をともに歩むことを力強く呼びかける康代学匠の声が会場中に響く。
細田陽子
編集的先達:上橋菜穂子。綿密なプランニングで[守]師範代として学衆を全員卒門に導いた元地方公務員。[離]学衆、[破]師範代、多読ジム読衆と歩み続け、今は念願の物語講座と絵本の自主製作に遊ぶ。ならぬ鐘のその先へ編集道の旅はまだまだ続く。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。