「アンストラクチャー」から「速さ」の編集へ/52[守]学匠メッセージ【83感門】

2024/03/16(土)19:30
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この人がマイクを持つと、ぱっと場に光がさす。この人が壇上に立つと、ふわっと軽やかな風が吹く。第83回感門之盟「EDIT TIDE」DAY1、第52期[守]基本コースの卒門式に先立ってメッセージを贈ったのは、荒波のなか10年以上にわたり[守]の舵取りをし続けてきた学匠・鈴木康代だ。

 

52[守]が開講したのは2023年10月30日。その1カ月ほど前、校長松岡正剛は千夜千冊1830夜『セクシーな数学』グレゴリー・J・チャインティンでこう綴っている。

 

最近のラグビーではアンストラクチュラルなプレーが注目されていますね。積み重ねられてきたゲームセオリー(セットプレー)にもとづいた攻守ではなく、あえて非構造的なプレーを展開して、次のトライシーンの可能性に結びつけていこうというものです。


「アンストラクチャー(非構造)」にこそ創発の可能性がある。ならば「不足、異質なもの、想定外を52[守]はどんどん取り込んでいこう」と指導陣は決めた。その後どうなったのか。

 

▲いきいきとした表情で話はじめる康代学匠

 

オンライン上に浮かぶ18の教室では、2日に1度、師範代からお題が飛んでくる。ある教室では「若輩者ですがよろしくお願いします」と大学生の学衆が自己紹介をすると、おなじ教室の仲間に小学2年生の学衆がいた。別の教室では、20個の回答をすればいいお題で、30も40もプラスアルファの回答を出し続けて師範代を驚かせた学衆がいた。どの教室にも「異質」や「想定外」が満ち溢れた。

 

教室の外に目を向けると、怒濤の編集を繰り出す松岡校長の姿があった。52[守]の開講直前には『知の編集工学』新装版(朝日文庫)『初めて語られた科学と生命と言語の秘密』(文春新書)が発刊され、千夜千冊は今朝第1845夜が公開された。近江ARSプロジェクトでは仏教者も度肝を抜かれるほどの見方を提示し続け、宇川直弘さん・武邑光裕さん@Dommuneヤマザキマリさん@NHKラジオ落合陽一さん@Weekly Ochiaiと対談も連打。こうした校長の編集が、また教室に刺激を与える。3月11日に松岡校長のインタビュー連載が朝日新聞ではじまるや、毎日記事に目を通して感想をしたため、教室の仲間に共有している学衆がいる。

 

「イシスの外も速ければ、教室のなかも速い。ウチとソトの行き来も速くて、アンストラクチャーな52[守]になっていた」と康代学匠は振り返り、その速さの肝を「編集稽古」だと断言。

 

日常とは違う、イシス編集学校という場で編集稽古をしているからこその速さ。その速さを落とすことなく、進んでいきましょう。

 

52[守]から漕ぎ出した船は、さらなる洋上の冒険へ。康代学匠の言葉は、その追い風になるはずだ。

 

  • 福井千裕

    編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。